検察の基準

江田けんじいわく:

http://www.eda-k.net/column/everyday/2010/01/2010-01-20.html

政治資金規正法違反は形式犯だから、小沢氏のような大物、あるいは現職の国会議員を逮捕するのはおかしいとの議論がある。

 しかし、これにはとっくに前例がある。たとえば、あの日歯連の1億円闇献金事件。村岡兼造氏は不記載を指示したということで有罪が確定した。坂井隆憲氏の場合は、秘書給与詐取という罪状もあったが、1億6千万円の闇献金不記載で実刑だ。

 検察は、企業・団体献金の廃止と引き換えに政党助成金を入れた以上、それをかいくぐる「裏献金」には政治資金規正法で厳格に臨むという方針をとうに確立しているのだ。>

趣旨は正しいですが、村岡兼造坂井隆憲の例はいずれも、直ちに今の小沢の件の参照基準とするには不適切です。

村岡の件はよく知られていますが、坂井の件をネットで探してもどういう容疑だったか、いい説明はなかなか出てきません。ようやく見つけたのは、共産党のホームページでした。

http://www.jcp.or.jp/diet/nittei/156/touron_0307.html

<本件についてみますと、逮捕許諾を求める要求書によれば、被疑者坂井隆憲議員は、1997年から2001年にかけて、自らの資金管理団体の収支報告書に関して、5期合計1億2043万6687円にもぼる過少の記入をし、これを東京都選挙管理委員会を経由して総務大臣に提出し、これが、収支報告書に虚偽の記入をすることを禁じた政治資金規正法違反にあたるというものです。>

村岡、坂井、いずれの件も、もらったお金を記載しなかったことが罪です。小沢の件が、自己資金で一時的に立て替えたことだけにとどまるならば、同様の罪として問うべきではないでしょう。

もちろん、小沢だって西松からもらってはいるのです。しかし、検察の基準は、秘書がやったか本人がやったか、です。そうでないと、西松問題と今回の整合性が取れない。

小沢の自己資金が動いたことは本人も認めているわけです。検察にとっても、そのこと自体は起訴対象ではない。だって、もっと多く9億円の自己資金を支出した鳩山総理の場合、検察は秘書の問題として処理しています。

もっとも、鳩山総理の場合は「知らなかった」のですが、小沢は知っています。しかし、現段階では小沢は立て替えだけですから、やはり逮捕・起訴されるべきではないと思います。

江田の意見は、趣旨としては正しいです。検察は、「裏献金」について厳しく対処しているのでしょう。

おそらく、検察としては、これでも国会議員に対しては慎重な姿勢を取っているつもりでしょう。だって、西松の件は明らかに裏献金ですから。ただ、立証できたのは秘書までで、政治家まではたどれなかったので、秘書のみ起訴され政治家については立件しなかったのです。

まとめると、検察の基準は、裏献金、つまり純増減額でみてもらっていた金を隠した上、かつ政治家本人が指示していた場合に、政治家を立件する、というものでしょう。そう考えると、確かに「検察の横暴」とまでは言えないと思います。

何となくそういう危機感があるのは、マスコミによる「煽り」が原因です。もちろん火種を提供している検察に責任なしとは言えず、リークについて一定の制限は加えられるべきでしょう。