外事警察

NHKが連休中に再々放送したテレビドラマの話です。

本放送では大した視聴率が取れなかったものの、その後ネットでかなり話題となり、再放送希望が増えて実現したようです。すでにDVD発売されており、レビュもおおむね好評。

http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%96%E4%BA%8B%E8%AD%A6%E5%AF%9F-DVD-%E6%B8%A1%E9%83%A8%E7%AF%A4%E9%83%8E/dp/B0033NND4Q

外事警察とは国民に公表されずに、外国人犯罪を専門に調べている公安組織です。公表されないんだから、実際にこういうものが存在するのかどうかはわかりません。

具体的には、外国人犯罪組織の構成員を買収して裏切らせ、二重スパイをやらせるわけですが、いろいろな事情で協力する日本人も出てくる。彼らは「協力者」と呼ばれるのですが、外事警察のスパイとして使いこなすためには、単にカネだけでなく、人間的信頼も必要だというところが、ドラマの見どころになっています。

京都で開かれる国際会議で爆破テロがあるという情報があり、外事警察が一般人の女性を「協力者」に仕立てて探るが、結局、すべてはCIAをバックとする外資の陰謀で、日本政府に米国の警備会社の高額サービスを買わせるためのでっち上げであった。懸命に犯人を追いつめた現場の気持ちを無視して、政府と外資は手打ちするのだが、納得できない警察官が実際に爆破を起こして、虚構のはずのテロを現実にしてしまう。これを利用して政府は外資と再交渉して、有利な条件で契約する。

というストーリーですが、私はちょっとプロットに難があると思った。前半で外交官のスパイと警察の協力者の黒人、二人が架空の犯罪組織によって殺されるのだが、実際に殺してしまうのだからそれだけで十分立派なテロ・犯罪でしょう。いかに日本がアメリカに従属しているとはいえ、そういう犯罪組織と日本政府が国益のために契約してしまうというのは不自然。

外資によるでっち上げとわかっているのに、その外資と契約しなければならない説明がない。すべてのテロはアメリカの陰謀であり、アメリカの会社にカネを払えばなくなるからでしょうか???

とはいえ、最後に外資が犯人としてしまうのはNHKでなければできないこと。民放ではいかなるアメリカ批判もタブーですからね。

テロの恐怖を煽って日本に高額警備サービスを売りつける外資の戦略は、現実の日米安保体制にも通ずるところがあり、興味深い。要するに、「抑止力が必要」というやつですね。

確かに抑止力は必要ですが、問題はそのレベルでしょう。均衡において戦争は起こらないのだから、本当にどれだけの抑止力が必要なのかはわからない。海兵隊が沖縄にいる必要があるのかどうか、という問題です。

アメリカの言い値を日本国民に受け入れさせるためには、「○○の脅威」を訴えて、恐怖感を植え付ける必要がある。

もうひとつ興味深かったのは、警察が一般人を協力者に仕立て上げるやり方。要するに、最初の段階で頻繁にカネを渡してズブズブにする。一度お金をもらってしまうと、そう簡単にはやめられなくなるわけです。

これまた、タテマエでは県民一体となって負担軽減を叫んでいても、ホンネでは撤退されたらもらえなくなって困ると思っている人もいるという現実に対応している。

辺野古沖の工事方法にしても、杭打ち方式なら反対だが、埋め立ててくれるなら賛成という声があるらしい。地元の業者が参加できますからね。自公政権下では辺野古埋め立てに地元も同意したわけです。