ドラフト制度の形骸化

最近、労働経済学まったく教えていないけれど、授業させらられば、ある1コマの開始ネタに使えますな。

私は野球には全く興味がなく、中継放送でお気に入り番組の開始が遅れたりすると腹立つ方ですし、ニュースでスポーツ・コーナーになるとチャンネルを変えてしまうぐらいですが。

学生の方から希望球団に応募できないというのは、やはり、「職業選択の自由」の制約ですかね。一方、球団の戦力均等化という目的で、ドラフトは行われているわけで、学生が自由に応募したら例えば巨人に人気が集中してしまい、巨人だけ強くなってしまうと言われます。

ただし、ここで経済学の屁理屈が登場します。いわく、仮にドラフト制度などなくても、プロ野球の面白みが戦力伯仲にあるならば、一人勝ちの状態は面白くないのみならず、有力選手がいる球団は高給に耐えられなくなって放出し、いずれ戦力は均等化する、とされます。詳しくは、たとえば大竹先生の中公新書など御覧あれ。

今回の件についていえば、どうしても嫌がっている選手を指名しても大リーグに逃げられるという判断と報じられていますけれど、実際のところ、沢村選手はそこまで巨人でないと嫌だったのか。読売新聞が謀略情報を流してそういう感じに仕向けたのか。

日本学生野球協会が、選手本人の希望発言を禁止しているのに、監督が勝手に発言するのはいいのか。監督だって、協会の制約を受けてしかるべきではないですか。

そもそも、国内のプロ野球に入ろうとするからドラフトの制約を受けるのですが、アメリカでもドラフト類似の制度はありますよね。日本人を取る場合には関係ないのか。選手にしても、日本だと巨人以外はダメだが、アメリカならどこでもいいのか。よくわからないところが多いですね。

結局、不透明感がともなうのは、本人が発言できないからではないですか。本人が巨人に行きたいと公言し、それでも他球団が交渉権を得た場合は、本人はそこに行くか、大リーグでも行くしかない、というルールが良いような気がします。

本来、ドラフトというのは職業選択の自由を制約しており、それを表面化させないために学生野球協会が本人の発言を禁止している、ということではないか。

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http://sankei.jp.msn.com/sports/baseball/101029/bbl1010291330009-n1.htm

<28日に行われたプロ野球のドラフト会議で、巨人は中大・沢村拓一投手(22)の単独指名に成功した。空前の「豊作ドラフト」と言われ、中でも早大・斎藤、大石とともに沢村は「ビッグ3」として競合は必至とみられていた。それが、ふたを開けてみれば、沢村を指名したのは巨人だけ。情報戦の勝利ともいえるが、他球団関係者からは「ドラフト制度を形骸化させる」と懸念の声も上がっている。

 本来、日本学生野球協会が定める規定により、沢村自身が希望球団を口にすることはできない。だが、今月8日、読売新聞系列のスポーツ報知が「関係者の話を総合すると」という書き方で「沢村の巨人に対する思いは強く、ドラフト会議で他の11球団から指名を受けた場合には、メジャー行きや浪人も辞さない決意を示しているという」と報道。他球団の指名を牽制するかのような動きに出た。

 それでもまだ、他球団の中には沢村を強行指名する動きはあったのだが、とどめを刺したのはドラフト直前の26日に出た「米大リーグのヤンキースが沢村の身分照会を行った」という情報だ。これを報じたのは他のスポーツ紙だったが、巨人とヤンキースは業務提携している間柄。これで「巨人でなければメジャーも」という可能性が一気に高まり、他球団は途端に及び腰になった。

 また、中大の高橋善正監督(66)も「嫌なところに当たって『どうですか?』と聞かれたとき、答えに困る。『なんで指名したんだよ』と言いたくなる」として、巨人以外からの指名を受けた際はドラフト当日の会見を拒否する姿勢を打ち出し、周囲を慌てさせた。この高橋監督も巨人OBで、「行きたいチームがあるのに、そう言えないのはおかしい」というのが持論だ。>