ギリシャは離脱できない、って言い過ぎ

ではないですか。

共通通貨圏からの離脱は、実質的には、固定相場制から変動相場制への移行と同じことです。アジア通貨危機の時には、多くのアジア諸国がそういう決断に追い込まれたけれど、その後、それらの国は順調に回復しています。ギリシャにはできない、と言える理由は何でしょうか。

衆愚政治」というのはギリシャで生まれた言葉ですから、あの国民には無理、というのは感情的にはわかりますよ。

問題は、離脱の手続きがきちんと定められていないことにあるのではないですか。「独仏の緊縮策を受け入れないなら強制的に離脱」なんて制度になっていないでしょう。

ギリシャ国民は財政緊縮を拒否する。独仏は支援を撤回する。ギリシャ国債はすべてデフォルト。新規発行も金利が高すぎてできない。もちろん、ギリシャ政府は公務員給与も国民の年金も払えなくなる。ギリシャ国民の自業自得です。これでいいんじゃないですか。いったい何がユーロ離脱と関係があるのか。

おそらく、ユーロで給与や年金を支払えなくなったギリシャ政府は、ドラクマを発行して払おうとするでしょう。誰も受け取らない、と言うんですが、他に何も受け取れないんですから、とりあえずギリシャ国民は受け取りますよ。ユーロと新ドラクマが例えば5対1の割合で交換される二重通貨体制のスタートです。

価値の低いドラクマでは大したものは買えません。その結果、政府は実質的に歳出削減した状態になります。つまり、ギリシャ国民がどう政治的に立ち回ったって、財政緊縮そのものを回避することはできないのですよ。

だから、このまま推移すればいいと思います。もちろん、ギリシャ国債は全額デフォルトで、これで独仏の銀行が危機に陥ったら、それは独仏国民の税金で救済すればいいだけの話です。

そもそも、ギリシャの経済規模は大阪府の半分、埼玉県と同じぐらいなんですから、これぐらいの損失、ドイツに負担できないわけない。

もちろん、短期的な衝撃は巨大でしょう。思えば2007年頃、サブプライムの時、「アメリカの金融取引の全体規模に比べてサブプライム・ローンの市場は微々たるもの」という説明が、何度も専門家によってなされました。しかし、実際にはその「微々たるもの」の破綻が津波を引き起こしました。

で、ギリシャ国民が紙屑同然のドラクマを受け取って悲惨な状態に陥っているところは、イタリアやスペインへの見せしめになります。財政緊縮をしないとこうなる、という教訓です。

ギリシャのユーロ離脱に悲しむべきところがあるとすれば、ヨーロッパ文明の発祥の地としてのギリシャを失うという、あくまで理念的なものです。

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http://blogos.com/article/39234/?axis=g:0

<連日ギリシャに関した報道がなされています。どうなるのでしょう。自業自得という感じがしないわけでもないのですが、ユーロからの離脱も現実的には困難なので、政権が変わろうが、結局は支援の条件交渉相手が変わるだけではないでしょうか。ユーロから離脱して自国通貨ドラクマに戻すなんてカードは切れません。ハイパーインフレとなり貨幣価値のないドラクマを受け取るのは、国から給与をもらう公務員ぐらいでしょうか。しかしまあ、これだけギリシャが注目されると、ギリシャをいやがおうでも意識させられるのですが、こうなると投機筋のギリシャ震源地としたゲームの行方次第では、世界の経済も影響を受けるのでしょう。ところでお騒がせのギリシャって、実体経済ではどれくらいの規模があり、ヨーロッパ経済に対して影響力を持っている国なのでしょうか。

ギリシャは、2008年以降GDPが落ちこんできていて、2012年は名目で2,060億ユーロ(21兆円)です。GDPのピーク時の2008年でも2,370億ユーロ(24兆円)でした。

県民統計による名目県内総生産(2009年)で日本ではどれくらいなのかを見てみると、ちょうど埼玉県が20.8兆円でほぼ同じで、千葉県19.5兆円、北海道18兆円、福岡県17.6兆円よりも少し規模が大きいという感じです。

大阪都構想を掲げている大阪と比較すると、人口はギリシャが1100万人で、大阪府が886万人と200万人ほど上回っていますが、大阪府の名目総生産が39兆円なので、大阪府のほうが経済規模が大きいことになります。さらにEU全体GDPに占める割合も2%程度でしかありません。

つまりは、ヨーロッパの小さな片田舎で起こっている問題にすぎないのです。>