平清盛

実は、この2カ月ぐらい、大河ドラマ平清盛」を録画して見ちゃっているのです。大河をきちんと毎回見るなんてのは、子供の時以来ですよ。

一つの理由は低視聴率です。政治もそうですが、私は国民に人気があるものにろくなものはないと思っているので、視聴率が低いということはかえってすぐれた作品であることを示唆します。

実際には、配役も脚本も、非常に稚拙なのですが、番組を見てからネットでいろいろ調べると、たいへん歴史の勉強になる。

ネットで、この大河ドラマのストーリーに基づいて「平家物語」の「偽書」を仕立てあげている面白い人がいる。この人は、東京の大学の国文科の院生さんらしいですが、たいへんな教養だと思います。

http://ncode.syosetu.com/n1603bc/

例えば、最近の「清盛、五十の宴」ですが、「唐橋本」はとてもよくできていて、本物の「平家物語」にそう書いてあったのかと一瞬誤解してしまったほどです。

http://ncode.syosetu.com/n1603bc/14/

この回のストーリーも演出も、滅茶苦茶だと思いました。例えば、呼ばれてもいない「五十の賀」に摂政と右大臣が突然現れるのがおかしいし、それに対する清盛の対応も礼を失していた。

ところが、この「唐橋本」を読むと、ストーリーは同じなのに、それなりにまともに読めてしまいます。つまり、テレビドラマの稚拙なところを、追加的な表現で巧妙に補うと同時に、書かない方がよいことは注意深く排除しているのです。例えば、テレビだと摂関家の貴人の、いきなりの喧嘩腰、横柄振りばかり目立つが、この創作では「各々相国に祝ひの御事ども申し奉らせ給へ」と一応の礼儀は尽くしている表現が先にあるので、不自然さを感じません。一方、清盛の不躾な態度は書かれていないので、余計な違和感がない。

さらにネットで調べると、もっと驚いたことがある。

このドラマ、清盛、後白河院、頼朝、という主役三人の配役が若すぎ、いろいろ不自然なところが目立つのですが、要人が若すぎることは王朝時代には必ずしもありえないことではないことがわかったのです。

この摂関家の兄弟、基実、基房、兼実ですが、この当時、急逝した基実は24歳、急遽、氏長者となった基房は22歳、兼実に至ってはたったの19歳だったらしいのですよ。

ところがこのドラマでは、この三人、どうみても40代以上としか見えないベテラン俳優によって演じられており、摂政を20年ぐらいすでにやっていそうに見えてしまうのです。

つまり演出の意図として、公家や摂関家というのは滅びゆく存在なので、どんなに若くても見た目老けた役者が演ずる必要があるというわけでしょう。

しかし、それではやはりリアリズムが失われる。だって、当時、清盛は50代、後白河院は40代、頼朝だって30代だったのですよ。

ただ、この大河ドラマで若いイケメンばかりの配役にしているNHKの意図はわかります。最近の歴史漫画や歴史ゲームでは、武将や国王がやたら若く表現されているでしょう。つまり、そういう若作りな歴史上の人物でないと、若い人が大河ドラマを見てくれない、というのがNHKの考え方なのです。その線で、清盛、後白河院、頼朝の配役が行われている。

それなら、公家に関してもその考え方を一貫して、摂関家三兄弟についても、ジャニーズのユニットみたいな配役でよかったのではないか。基実なんか、17歳で関白になっているのですよ。高校の生徒会長じゃあるまいし。しかし、これが王朝政治の現実だったのですね。

昔の大河では、活躍期の壮年時代を基準にしてふさわしい年齢の配役をして、青春時代については若作りで対応していた。

今は、青春時代を基準に配役して、年齢が上がると老けメイクで対応する。

これを踏まえると、信西とか、藤原信頼とか、あまり家柄のよくない公家が実権を持っていたという事実もよく理解できます。だって、いくら関白でも、高校生には政治なんてできませんよ。

大河ドラマだけ見ていてはバカになるだけですが、いろいろツッコミを入れつつ、ネットでお勉強すると、歴史がより深くわかると思います。