賃上げなき景気回復?

改革派も、この人みたいに改革派でなさそうな人も、どうしてこうまた、口を開けば「雇用がない」を繰り返すのかな?
 
「40歳定年説」をはじめ、改革派の人も、あたかも「日本は大失業時代」みたいなイメージを振りまいて改革が必要と言っている。
 
しかし、現実の日本の失業率は、これ以上どうやって下げるの?と言ってもいいくらい低いですよ。現在でだいたい4.2%あたりでしょう。これで世界経済が回復しようものなら、たちまち3%行きますよ。
 
この人の場合、言いたいのは雇用が伸びないことではなく、賃上げがないことでしょう。
 
しかし、日本経済の特徴は、おそらく賃金が伸縮的なことですよ。そのおかげで、金融危機でもそれほど大きな雇用調整が行われず、今日まで来ていると考えていいのではないですか。
 
アメリカで急激に失業率が上がっているのは、とりあえず賃金が硬直的(!)だから、と考えられます。
 
実質賃金の推移について、ネットで探してみて、手頃なものはこれでした。ちょっと、元データの出所が不明だが。
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確かに、2008年以降の景気後退につれて、実質賃金が大きく下がっている。もっとも、これは所定内給与(月給)で、労働時間当たりの賃金ではない。所定内給与として、週40時間労働の月給であると考えれば時間当たり賃金を代理するものだが、会社にはいるけれど仕事がない、あるいは仕事の密度が低いということが景気後退期にはありうるから、実質賃金の指標としては完全とは言いかねるが、それでも、会社の月あたりの固定費は低下しているはずで、その分、リストラを回避しやすくはなったはずだ。
 
前回の景気拡大期(2003~2007)には、実質賃金も上がっています。したがって、実質ベースで見れば、賃上げなき景気拡大とまでは言えない。
 
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<今度の総選挙の結果を以って、民主党のデマンド型政策は効果がないと断罪され、再びサプライサイドの景気刺激策に軍配が上がるであろう。
 
実際にはサプライサイドのトリクルダウン理論など誰も信用していない。いざなき超え景気で、雇用も賃金も増えなかった日本国民はサプライサイド理論に反感すら抱き、国民への直接給付などのデマンド型の政策に魅力を感じ、3年前に民主党を選んだのである。
 
デマンド型が効果がないと断罪されることに納得いかない有権者も多いかも知れないが、納得していない人が子ども手当を貯金せずに消費に回したかと言うとそれは疑わしい。残念ながらサプライサイドの方が100%お金を市場に回せるのに対し、デマンド型は一定額貯蓄に回わってしまう。
 
我が家でも、妻にさんざん「子ども手当は貯金するな!貯金したら子ども手当は効果がないから廃止という結論になるぞ!」と説いたが、まったく理解してもらえず、国からもらったお金は貯金されたままである。
 
安倍自民党の国土強靭といった政策がどこまで効果があるかはわからない。仮に効果があって景気が回復しても、今度もまた雇用なき(賃上げなき)景気拡大になる可能性は高い。自民党政権が今度はいつまで続くか保証はなく、仮に続いても小泉政権のように擬似政権交代で政策がガラッと変わってしまうリスクもある。建設業もうかつに雇用を増やせない。ましてや景気拡大が建設業以外の業種に拡大しても、企業は賃金抑制の手を緩めないだろう。>