大阪市営地下鉄民営化の利権

これはひどい話だ。負債は市に残し、儲かる事業本体は安値で民間に払い下げようということらしい。

やはり橋下はクズだな。

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http://biz-journal.jp/2013/03/post_1724.html

<2月15日、大阪市橋下徹市長(日本維新の会代表)は市議会に、同市交通局が運営する市営バスと市営地下鉄を民営化する条例案を提出した。なぜか京阪圏以外では詳しく報道されていないが、この民営化の周辺には強烈な利権臭が漂っている。

 そもそも、市営バス(132路線)は大阪市全域および隣接する地域を運行エリアとし、一般の大型バスと、それではカバーしきれない住宅地や公共施設を細かく結ぶコミュニティバス赤バス)からなる。条例案では、一般バスを17路線、赤バスを26路線廃止し、スリム化したうえで民間企業へ売り払い、2014年4月から民営化する格好だ。

 一方、市営地下鉄は、市が運営する新交通システム路線「南港ポートタウン線」(ニュートラム)と合わせて約140キロの線路で、大阪市のほぼ全域を結ぶ。1日約230万人の乗客を運び、地下鉄としては東京メトロに次ぐ規模。公営としては国内最大の乗客数を誇り、10年度決算では239億円もの黒字を上げている。一般会計からの補助を除いても142億円の黒字だ。条例案では、この地下鉄を15年度から株式会社にすることとなっている。

 市営地下鉄の民営化については、10年8月に大阪市が政策として打ち出し、検討の俎上に載っていたものだが、こんな超健全経営の事業を、いったいなぜ、大阪市は手放そうとするのか?

 2月7日の定例記者会見での橋下市長の説明は、いつもながら単純明快で勇ましい。

「(地下鉄が民営化されれば)巨大な企業が誕生するんで、そりゃ変わると思いますよ、大阪の雰囲気が。……大阪が沸きに沸くぐらいの、経済界が沸きに沸くぐらいのね」

 民営化賛成の追い風を吹かせるためなのか、2月7日、大阪市は昨年12月に方針を決めていた終電時間の延長について、3月23日からダイヤを改正し、最大30分延長すると発表した。

 加えて、3月末までに駅トイレのリニューアルも完了させるという。

 一方、利用者、市民にとっての功罪はともかく、めったにない“出物”に関西財界は沸いている。大阪市役所関係者が解説する。

「裏で糸を引いているのは、大阪府市特別顧問の上山信一慶應義塾大学教授)ですよ。彼は旧運輸省(現国土交通省)出身の鉄道オタクで、国鉄民営化の時のように、一部の企業に多額の利益をもたらす“鉄道のうまみ”を熟知しています。關(せき)淳一市長時代に大阪に入ってきて民営化を目指したものの、平松邦夫市長になって顧問ポストからはじかれ、橋下と一緒に、市政にまた戻ってきた。彼の悲願である市営地下鉄民営化は、関西私鉄各社にとっても、喉から手が出るような話です」

 それを裏付けるように、関西私鉄の1社である京阪電気鉄道佐藤茂雄相談役(大阪商工会議所会頭)は、11年11月、知事・市長のダブル選で橋下氏が圧勝すると、私鉄各社をまとめ、「各社から数人ずつ、大阪市交通局に入って一緒に改革をしていく。結果を上げて、利益を皆が享受できるような会社になってほしい」と公に語った。

 交通局という市の部署に営利企業から人が入り、「利益を享受」しようと画策するなどということが、果たして可能なのか? 

 橋下市長はまず、京福電気鉄道の藤本昌信副社長を市の交通局長に抜擢。昨年4月1日付で就任させた。そればかりか、民営化の大方針を検討する府市統合本部・市営地下鉄民営化プロジェクトチームに、関西私鉄5社の幹部らを招いたのだ。

 これから売却する事業の中に、有力買い手候補である関連民間企業の幹部らを入れて、無料でデューデリ(事業・財務の精査)をさせる。大阪市役所関係者が「まるで官製談合のようだ」と眉をひそめるのも無理はない。

●不可解な民営化に市民からも疑問噴出

 そもそも地下鉄というビジネスは、駅や線路、トンネルの構築に巨額の費用がかかるので、事業当初は出費が先行する。だが、乗客数の多い都市部を運行するため、いったん駅や線路が出来上がれば、あとは毎日キャッシュ(日銭)が入り、累積損失が解消されていくと安定的な収益モードに入っていく。そして大阪市営地下鉄は、安定的に利益が得られる段階に入っていた。

このように、多額の税金が投じられてきた事業が、一部の民間企業の手に渡ることについても、疑問の声が上がっている。大阪市財政問題に詳しい自治体問題研究所(東京)の谷口積喜研究員は、「ここで市営地下鉄を民営化するというのは、『負担は税金で、果実は営利企業に』という話ですよ」と批判する。

 橋下市長は、民営化の意味を「税金を使う組織から、納める会社へ」とも言うが、この理屈も怪しい。谷口氏は「公営でも、事業により剰余金が発生した場合は、自治体に納入するよう法律で定められています。地下鉄は市営を維持したまま、利益が上がれば市財政に戻していけばいいのです」

 大阪の景気も大事だが、高齢の市民には、歩いて行ける距離に停留所があって、バスで買い物や病院に行けることも切実だ。

 現在は、地下鉄の黒字でバスの一部の赤字を埋め、全体として公共交通網が維持されているが、民営化となれば、地下鉄とバスは別会社が運営することになるため、赤字路線が廃線となれば、このネットワークも壊れてしまう。

 市民団体「交通権の確立・大阪市営交通を守り発展させる会」の成瀬明彦事務局次長は、「現状では、バスは地下鉄と連結決算でやりくりできているのに、わざわざバラバラにして、高齢化でますます重要になっている『市民の足』を奪おうとする。とんでもない話ですよ」と憤慨する。

 3月から終電延長が実現することは、夜が遅いサラリーマンなどには確かに朗報だが、「公営であっても、利用者目線の改革はできる」ことの証左にも見える。前出・谷口氏も、「完全民営化すれば株主への配当も必要になり、その分、サービス向上や安全への投資が削られる恐れもある」と見る。

 このように、民営化への期待と不安が交錯するなか、2月26日に開かれた大阪市議会の水道交通委員会では、岩崎賢太市議(共産党)が、民営化問題の急所を突いた。市バスの資産が全部売れたとしても、大阪市が市バス事業の資金を調達するために発行した公営企業債の償還や、退職金の積み立てに足りない穴が315億円に上ると指摘し、「どう処理するのか」と追及したのである。

 市側は、「第三セクター等改革推進債の発行で資金を調達する」などと答えたが、推進債は地方債の一種なので、市民の税金から返さなければならない。簿価でも1兆円を下らない地下鉄資産を手にして一部企業が沸きに沸く反面、市民は生活が不便になるうえ、民営化のために新たな借金さえ背負わされる可能性があるのだ。

 橋下市政をウォッチしている全国紙デスクが言う。

「橋下氏への関西財界の評価はもともと芳しくなかったが、原発問題で、一時冷え切りました。それが再稼働容認で関電(関西電力)と手を握り、地下鉄というアメ玉を放り込むことで、財界内に味方を形成するつもりなのです。背景には、維新の会の苦しい台所事情も見え隠れします」

 一部の企業への利益誘導が、「民営化」というお題目をまとい推し進められる一方で、庶民は踏んだり蹴ったりという事態になりかねない。>