減税って景気対策?

常々疑問に思うんですが。

もちろん、減税というのは標準的な景気刺激を目的とする財政政策です。
日本は、「失われた10年」の頃から、様々な減税を繰り返してきましたし、
アメリカも同様です。

経済理論に立ち戻ると、減税が景気対策になるかどうかは必ずしも自明ではありません。

標準的な静学的ケインジアン・モデルでは、減税はもちろん有効なになりますが、
総需要追加効果(乗数効果)で見れば、財政支出の方が大きくなります。
たとえ、減税しつつ同額の政府支出拡大を行っても、
拡大幅と同額の総需要追加効果はあります(均衡財政乗数定理)。

もっとミクロ経済学的基礎に基づいた動学モデルを考えるならば、
増税/減税は、課税タイミングの変更に過ぎず、
歳出規模の変更をともなわない限り、経済活動には影響を与えない、と考えられます。
リカードの中立命題)

減税によって歳入が減ると、結局、政府は歳出削減をせざるを得なくなる、
というルートで、減税が政府規模を削減する経路は考えられますが、
そのような政策を取るには、まず政府の適正な規模を定義して、
それに対して現行の政府規模が大きすぎることを言わなければならないと思います。

経済成長が停滞したり、景気が悪化すれば、
もちろんいろいろな理由が考えられるわけですが、
財政政策に原因を求め、減税したり政府支出を増やしたりするのは、
多くの場合拙速だと思います。

現代のマクロ経済学では、景気については、
基本的には金融政策によって対応すべきである、
とされているように思うのですが。