インタゲ失敗の実害とは

岩本先生のブログ、すごいアクセス数になってますね。一流経済学者のブログにもかかわらず、あそこは、いつもは過疎っています。この盛り上がりは、金融政策に対する真の意味での専門家の発言が待ち望まれているということでしょうね。

飯田泰之さんも、研究論文の区切りが着いたら書くようで、展開が楽しみです。

こうなると、野次馬としては「大トリ」として伊藤隆敏先生の御登場をお願いしたいものです。伊藤先生が沈黙を続け、若手の飯田さんが岩本さんのような大家に対し孤軍奮闘するのはちょっとかわいそう。

もっとも、伊藤さんが出てきて岩本さんへの支持でも表明しようものなら、それこそ10年を超える金融政策論争は決着してしまいます。ケインズではないけれど、結局、長期的には政治より理論の方が大きな影響を与えるものですからね。同時に、それで伊藤先生の論客としての生命は終わってしまうでしょう。

いわゆる「池池」コンビも岩本先生も、いわゆる「コミットメント問題」があるのでインタゲは無理、と主張しています。具体的には、ターゲットとなるインフレ率を人々に信用させる方法がないので、インフレは起こらない、という話です。

素人の印象を言わせてもらうと、それならインタゲしていいじゃん、という気もします。仮にインタゲを掲げてもインフレが起こらないなら、国民にとって実害はありませんから。

とすると日銀があくまでもインタゲに反対するのは、目標を掲げて達成できなかった時に政府やマスコミ・国民から批判されたくないという、自己保身に過ぎないようにも思えます。

白川総裁は、GDP成長率や失業率、資産価格など、他にも重要な経済指標があるので、一般物価水準にのみターゲットにすべきではない、と言っています。しかし、それなら、そういう重要な指標を加重平均したターゲットを考えればよいのでは、と言いたくなります。Christianoなどは、資産価格もターゲットの一部に加えることを提案しているようですし。

自己保身でないとすれば、インタゲを掲げるとなりふり構わず何でもやらざるをえなくなり、結局、制御不能なインフレになると考えているのかもしれません。しかし、それなら、コミットメント問題などともっともらしい言い訳を持ち出す必要はないでしょう。

現在の日銀の「時間軸政策」それ自体は、エガートソンなどが主張する政策に非常に似ており、日銀がやるべきことをやっていないとまでは言えません。ただ、ターゲットがゼロ%で低すぎる、ということはあるかもしれませんけれど。

それより問題は、その時々の日銀幹部の発言が、いかにもインフレ反対、デフレマンセーに受け取られがちなことでしょう。これはマスコミのせいと言って済む話ではなく、「政治とカネ」問題と同様、オーバープレゼンスが必要です。

例えば、財務大臣が「1%のインフレ率については、政府と日銀は目標を共有している」と言ったとして、その翌日に「そんなことは共有していない」と日銀総裁が証言するようでは、「やる気なし」と受けとられるでしょうね。もう少し言い方を考えないと。

そもそも、政治家は言ったことに対して厳しく責任を追及されます。特権を与えられている日銀が、責任を負う必要なし、責任を負いたくないので何も言わない、で済むものでしょうか。