正直に「増税は社会保障の増額ではなく現状維持のため」と言うべき

この産経の記事はなかなか的確です。

菅総理が、小野先生の言うとおり消費税増収分を新規雇用のためなどに使ったら、かえって将来の社会保障の持続可能性を危うくすることになりかねない。

小野先生がマスコミに登場して発言することをそのまま菅政権の公約のように国民が受け取ったら、ちとまずいと思います。

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http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100628/plc1006281758014-n1.htm

 菅直人首相の発言がぶれ、議論の先行きは不透明感も漂い始めたが、消費税問題は参院選の大きな焦点となった。民主、自民両党は「10%」としたことについて、社会保障財源の不足分を根拠としているが、税率10%では不足の穴埋めには不十分で説得力に欠ける。

 消費税は、国の予算総則で、基礎年金、老人医療、介護の3分野に使うとされている。ところが、高齢化が進んで社会保障費は伸び、今の3分野の支出総額は約16・6兆円に上る。

 これに対し、消費税収の見込みは約12兆円だが、すべてを国が使えるわけではない。現行税率5%のうち1%分が地方消費税で、残る4%も、その約3割が地方交付税として自治体に回るためだ。国が3分野に使えるのは約6・8兆円に過ぎず、16・6兆円との差額は約9・8兆円もある。

 自民党が「当面10%」としたのは、増税分をこの差額の穴埋めを中心に振り向けようという考え方だ。菅首相も18日の記者会見で、「現行消費税では高齢者福祉にかかわるものが10兆円ほど足りない。自然増を念頭に考えると、この程度必要だ」と説明した。

 消費税を1%上げると約2・4兆円の税収増が見込まれる。5%分のアップで約12兆円の増となる。9・8兆円の埋め合わせには十分というわけだ。

 だが、計算通りに運ぶのか。というのも、この計算は増税分を地方に配分しないことを前提としているためだ。財政難に苦しむ地方も消費税引き上げに期待している。もし、地方への配分構成が変わらないと国の増収分は約6・8兆円にとどまる。とても約9・8兆円を穴埋めすることはできない。

 さらに問題なのが、社会保障制度の改革がなければ、毎年1兆円のペースで増え続ける点だ。両党は自然増も考慮に入れていると説明するが、焼け石に水となりかねない。

 首相は増税分を成長分野に集中支出する考えも示しているが、社会保障費だけでも足りないのに、不可解だ。

 そもそも民主、自民両党は増税の前提となる年金や医療といった社会保障制度の具体的改革案を示しおらず、必要額を積み上げてきたわけではない。それどころか、両党内からは「大幅引き上げは難しく、10%は有権者に理解してもらえるギリギリの数字」(自民党幹部)との声も聞かれる。政治的さじ加減として「10%」を打ち出したというのが実態といえそうだ。(河合雅司)