今さら円高対策?

「政府日銀」が、ようやく重い腰を上げ「円高対策」に取り組む兆しが見えてきたことは何よりですが、1ドル=84円を割って初めて、日銀に文句を言い出した財界人やマスコミには、違和感を覚えます。

というのも、リフレ派がさんざん日銀批判をしていた時には無視したりバカにして、「構造改革」だなんだかんだ言っていたくせに、いざ本当に苦しくなると無節操に金融・為替の無策を批判するのは、片腹痛いというものです。

デフレは悪くないというなら、苦しい時でもそう言い続けるべきですよ。

もちろん、デフレは円高のひとつの構造要因ですけれど。

http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/economy/article631_10.html

<日本経済は芳しくない上に、日本政府の財政赤字は巨額に上っているのに、円高
進む、というある意味で奇妙な状況が起きています。現下の円高を促す唯一の国内要
因(国際経済における要因は色々ありますが)は、デフレであることぐらいでしょう。
そう考えれば、現下の円高は、ケインズが言うところの「美人投票」の結果として日
本円が買われた、といえるかもしれません。つまり、真に美人(通貨に価値がある)
と思って皆が投票する(通貨を買う)のではなく、この候補者(円)を恐らく多くの
人が投票する(買う)と予想されたから、結果としてふたを開けたらその候補者が高
く評価されていた(円高になっていた)、ということなのかもしれません。この見方
に立つなら、現下の円高がいつまで続くかは、「美人投票」的に円高になる為替レー
トをめぐる予想(期待)がいつ崩れるかにかかっているといえます。>

現在の円高の要因の、おそらく3分の2ぐらいは「美人投票」、つまりバブルだと思うけれども、残りの3分の1はデフレであり、構造要因でしょう。

日銀のようにデフレを不可避と捉えるのなら仕方ないけれど、政策で回避できると考えるなら、もっと早くから適切な対策を政治は実施しておくべきだった。

その点、小泉改革後期、景気回復の最中でも日銀に圧力をかけ続けた竹中・中川は首尾一貫していたと思いますよ。

小幡さんの、次の論点も重要。

過去10年の日米の累積インフレ率格差27%を考慮すると、1995年の80円割れに比べて、今の85円はそれほど円高ではないとのこと。つまり円高はほぼ100%構造的である。

逆に言えば、リーマン危機以前の円安時代の輸出による景気回復こそバブルで、その間必要だったのは、むしろ「ものづくり」から脱却する産業政策だったというわけ。

すべて正しいとは思わないけれど(今の円高水準はかなり美人投票と思うけれど)、デフレを不可避、ないしは所与として考えるなら、円高阻止の方がむしろ問題先送りということですな。

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http://blog.livedoor.jp/sobata2005/archives/51550697.html

<さて、冷静に考えてみよう。確かに、1995年以来の円高で、水準としてはそれで間違いないが、この水準はどの程度過度の円高といえるだろうか?

そもそも円高、というのが、前と比べてという相対であるだけに、今円高なのか、前円安だったのか、それは難しい。

たとえば、ここ10年のインフレ率の格差を日米でとると、累積で27%になる。10年前は1ドル100円がなんとなく適正水準という感覚があったとすると、今は、1ドル73円でも良いわけで、こうなるとまだ円安ということになる。

この観点に立てば、この5年ぐらいは異常な円安に恵まれ、その結果、中小企業や輸出産業が息を吹き返していた、という解釈になる。むしろ、その一息ついたときに、思い切った次への手を打てなかったこと、構造転換を図らなかったことが責められるべきだったことになる。>