攻防線は73~74円!?

政府・日銀の介入のタイミングが遅かったかどうか、議論になっていますけれど、この方がこういう風におっしゃっているんですから、当局が動かなかったのも不思議ではない。

実際、名目上の円高にもかかわらず、政府・日銀内で危機感が広がらなかったのは、この、実質実効為替レートでみてそれほどではなかったからでしょう。

それにしても、日銀批判の急進派とみなされてきた伊藤先生がこういうことを言っているのは、とても意外な感じです。80円台でも決して行き過ぎた円高とは言えず、攻防線は70円台となると、日銀の金融政策は円水準で見ると緩和が足りないとは言えない、と言っているようなものですから。

かつての舌鋒鋭い伊藤先生はここに。

http://blogs.yahoo.co.jp/mazepparrigo/12010262.html

この原文、今では取れなくなってしまった。民主党政権経済財政諮問会議を廃止したから。

もっとも、ここで伊藤先生はゼロ金利政策を擁護しているだけです。ゼロ金利政策こそ日銀が年来取ってきた政策なんですから、日銀擁護でこそあれ、批判などではありえないかもしれません。

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http://mainichi.jp/select/biz/news/20100908ddm008020005000c.html

<--円相場と株価の先行きは?

 ◆円相場に影響する米国経済は成長率が下がり、低空飛行が続く可能性がかなり高い。商業不動産の指標がずっと弱く、住宅市況も回復の兆しがない。米国が良くなるまで円高圧力は続く。今後半年は1ドル=80~90円の水準だろう。株価も結局、米国と連動しており、良い材料は乏しい。

 --政府による為替介入の可能性は?

 ◆タイミングと手法が重要。市場が「本当に行き過ぎだ」と思う水準で思い切った大規模介入をすると雪崩を打って円安に動く。単独介入でも効果はある。ただし、今の為替水準では、各国は介入に納得しないだろう。

 --なぜですか。


=久保玲撮影 ◆円は対ドルで95年4月の1ドル=79円75銭が史上最高値だが、その後の物価変動を踏まえた実質実効為替レートで見ると、現在は当時より30%近く円安だ。企業も海外に工場を持つなど円高対応力は増し、赤字で輸出するレベルにまでは至っていない。10年前には100円を攻防線に大規模介入したが、今なら攻防線は73~74円だ。

 --政府が追加経済対策の基本方針を決めました。

 ◆追加経済対策以外にも、政府の成長戦略を前倒しして、法人税率を引き下げるなど講じるべき対策は多い。さらに、政府が今一番推進すべきなのはFTA(自由貿易協定)交渉だ。欧米の前に、交渉中の豪州、韓国の案件を進める。日本から輸出しやすくなれば国内生産も雇用も維持される。少なくとも企業の円高耐久力は増す。政府系金融機関も一緒になって資源を買いに出るなど円高メリットを生かす方策も考えるべきだ。

 --日銀が追加の金融緩和に含みを持たせましたが、どんな政策余地がありますか?

 ◆上場投資信託ETF)などさまざまな民間金融資産を積極的に購入して資金供給を拡大する手がある。財政のモラルハザードを起こす懸念はあるが国債買い取りの増額も有効だ。日銀と政府が本当に協調するなら、日銀が資産を買い取り、万が一、損失が出ても財務省が補てんする体制を作るべきだ。【聞き手・和田憲二、大久保渉】

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 ■人物略歴

 ◇いとう・たかとし
 1950年生まれ。ハーバード大大学院修了。大蔵省副財務官などを経て、06~08年に経済財政諮問会議間議員を務める。今年4月から現職。>