貸金業規制批判の自家撞着?

これはちょっと、ちぐはぐな批判ですよね。

貸金業規制の根幹が上限金利規制であり、これによって「過払い利息の返還」問題が起こったのですから、規制を批判するなら、消費者金融の再建に返還額カットが利用されるのもやむをえないというべきでしょう。

ところが、産経は、規制を批判しながら武富士の再建に返還額が流用されるのはおかしいと言いたげです。

「はじき出された利用者が、ヤミ金に流れる懸念」も根強いと言っているのですから、規制を批判していますよね。

消費者金融の借り手は、当事者なのですから、会社更生法適用にあたり、彼らが有する過払い金返還債権が他の債権に優先するというのは、必ずしも当然ではないでしょう。

そもそも、「はじき出された利用者が、ヤミ金に流れる懸念」というのは、確かにそういうこともあると思うけれど、量的には大した問題になっていませんよね。だって、最近マスコミで「ヤミ金大繁盛」って、あまり聞かないもの。

もっとも、過払い金返還訴訟には一定の制限を最初から設けるべきだったでしょう。

本来、貸金業規制は、新規の貸出の上限金利と数量を規制するのが目的だったはずです。その意味で、借してくれるところがなくなった、というのは、まさに規制の目的が達成されつつあるということです。

ところが、実際には、消費者金融から既存の借り手への所得移転の制度としてもっぱら利用されている傾向がある。

したがって、武富士の再建にあたり返還額カットが利用されるのは、至って当然の気がします。

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http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100927/fnc1009272113021-n1.htm

消費者金融大手の武富士会社更生法を申請すれば、契約者が本来受け取ることができた過払い利息の返還は大幅にカットされる見通しだ。利息返還の重荷に加え、6月の改正貸金業法の完全施行による規制強化で、新規融資が極端に絞り込まれるなど、業界は縮小の一途だ。はじき出された利用者が、ヤミ金に流れる懸念も根強く、受け皿となる「健全な消費者ローン」の整備が急務だ。

 武富士会社更生法による法的整理を選択した最大の理由が、「過払い利息の返還額のカット」にあるとみられる。

 同社に対し、過払い利息の返還を請求していない契約者は200万人程度に上るもようだ。少額のため、請求を放棄する契約者も相当数になる可能性が高いが、返還必要額は「1兆円を超える」(業界関係者)との見方もある。

 同社では、業績悪化で資金繰りに窮する中、再建支援スポンサーを模索していた。しかし、返還額が未確定のままでは、手を挙げる支援先は出てこない。早期再建には、返還額の大幅カットで契約者に負担を強いるしかなかった。>