緩和競争

昨日はともかく、今日の株価上昇はすごい。

経済各紙はいっせいに、日銀がついに予想外の量的緩和に動いたことで、世界的な金融緩和競争となり、流動性相場が来た、と報じている。

日銀法改正までちらつかされ、日銀が先手を打ったのでしょうか。
日銀も日本人である以上、中国政府の圧力に屈した日本政府と同じ?
日銀も圧力をかければ動かせる、という悪い前例を作ってしまった?

ただ、これには前兆がありました。なにせ、日銀では最右翼のタカ派と見られた宮尾さんまで、先日、日銀券ルールを撤廃して量的緩和の拡大を検討すると言っていたのですから、昨日の踏み込みはそれほど驚くべきことでもないかもしれません。

http://blogs.yahoo.co.jp/mazepparrigo/33353592.html

在野のタカ派である小幡さんがびっくりして、いつも舌足らずに書くのが持ち味なのに、長々と批判しているのが、むしろ滑稽なぐらいです。日銀に裏切られた、という思いでしょうか?

http://blog.livedoor.jp/sobata2005/archives/51570152.html

「緩和競争」と言われるのは、日銀が緩和したら円安になるので、それを円高に引き戻すために米国FRBが追加緩和をする。その効果を「緩和」するために、日銀はさらなる量的緩和に追い込まれる、というスパイラルが発生するからです。

戦前、1930年代に似たようなことが起こり、これが大恐慌からの脱却に一役買ったわけですが、これについて昔の高校世界史教科書(山川出版社等)は、マル経的な経済学に影響されてか、「各国が通貨切り下げ競争に走りブロック経済化と世界貿易の縮小を招き、世界大戦の背景となった」と、さも悪いことのように書いていました。

しかし、現代の経済学はもはやこんなことは言いません。世界で一番売れているマクロ経済学の教科書であるマンキュー『マクロ経済学(英文第6版)』349ページには、「世界恐慌の時、いち早く通貨を切り下げた国はそうでない国より、回復が早かった」と書いてあります。

もちろん、日米で言えば、日本もアメリカも金融緩和しているわけですから、為替レートが円高に向かうか円安に向かうかはわかりません。

実際、大規模な日銀の緩和は、米FRBが対抗していっそう過激な緩和を発表するとの憶測を市場関係者に抱かせ、昨日、為替レートは一時、82円台をつけました。

そのため日銀は「また小出し」と批判を受けたわけですが、株価は上がっています。大事なのは為替ではなく国内の流動性が上昇したということです。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/mar/17/g20-globalrecession
(上記マンキューの記述も、このEichengreenの研究に基づいています)

もちろん、今回の緩和による株高は、日銀が意図してバブルを発生させたということですから、irrational exuberance (Greenspan)ではあります。もっとも、株価水準自体はまだだいぶ低いですけど。