トンデモが正しかった?

原発事故と金融危機には似たところがある。

どちらも、権力側やそれに寄り添うメジャーな(まともな)学者は、そういうことは起こらない、と言っていた。実際に起こると、「想定外」と言い、これまで掲げてきた理論をかなぐり捨てて、「量的緩和」とか「ヘリコプターで放水」とか、desperateな手段で何とか事態を収拾しようとした。

問題は、この経験を踏まえて理論を修正するかどうかでしょう。

経済学でいえば、量的緩和の効果を示した理論はないのです。しかし、金融危機大過なく過ぎ去ったのは、FRBの大規模な金融緩和のおかげと言えるでしょう。

危機の前、経済学者は何と言っていたかと言うと、Great Moderation、「大緩和」仮説です。これは、1980年以降、景気変動の振幅が非常に小さくなったというものです。

ではなぜ大緩和が起きたかと言うと、それぞれの学派が勝手に自分たちに都合のよい説明を付けた。一方では、「財政金融政策がfine tuningに成功した」というケインジアンの説明があり、他方、古典派は「規制が緩和され金融商品が豊富になり、市場の保険機能が高まって景気変動が小さくなった」と説明しました。

しかし、豊富な金融商品のおかげで危機が起こったわけですよ。

原発について言えば、かつて1980年代、広瀬隆「危険な話」が大きな話題となり、「朝まで生テレビ」における彼の特異なキャラがパロディー化されて人気を博しました。しかし、彼の意見はトンデモとみなされ、政策に反映されることはなかった。

しかし、今はまさに、少なくとも見かけ上、トンデモの言っていたとおりになったわけですよ。