震災復興は円高の原因!?

原田泰さんの新刊、いろいろ面白いことが書いてあった。

元々、大和総研のコラムや、最近雑誌に書いたものが元になっているので、ネットで探せばけっこう出てきます。

要するに、日銀が適切にマネーサプライを増やさず、政府が景気対策と称して拡張的財政政策ばかりやることが、円高を招き、結果として日本がアジアの成長需要を取り込めない原因だというのです。

為替レートに関する「相対マネーサプライ仮説」は、理論的根拠がいささか乏しいが、やはり何かある、と私も考えております。

財政について言えば、確かに、支出削減を進めた小泉政権下では円安となった。震災復興などやめた方が円安になり日本経済にとって良いのかも。

実際、震災当日、いきなり70円台の強烈円高がありましたよね。あの時は、震災復興のため、世界中から日本資金が引き上げられ国内投資に向けられるから円高、という解説がなされた。

逆に言えば、震災復興資金を増税で調達した方が円高にならず、国内産業にとって好ましい、ということかな。

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http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=331

<多くの人が、日本は外需主導の成長をしていると誤解しているが、日本の輸出は伸びていなかった。IMFのデータ(World Economic Outlook Database)によると、発展アジア地域の輸入量は2000年から08年までで2.2倍に増えているものの、日本のGDPベースの実質輸出は1.6倍にしか増えていない。日本は発展するアジアの需要を取り込めていない。

 その大きな理由は円高である。日本では、輸出の増加によって景気が回復すると金融緩和政策が停止され、円高になる。このメカニズムが金融の量的緩和(2001年3月から2006年3月)と為替介入が行なわれた時期を除いては、ほぼ一貫して続いていた。>

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http://www.dir.co.jp/souken/research/harada/column_list.html

http://www.dir.co.jp/publicity/column/101007.html

<しかし、財政拡大策は円高対策にはならない。なぜなら、財政の拡大は金利の上昇を招き、金利の上昇は円の上昇をもたらすからだ。これは1999年のノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル教授が明らかにしたことで、中級以上のマクロ経済学の教科書には書かれている(同じことを指摘したジョン・フレミング教授の功績も称えて、マンデル=フレミング・モデルと呼ばれている)。ノーベル賞の大好きな日本人が、なぜマンデル教授の業績を信じないのか、私には不思議である。.

また、別にノーベル賞の権威に拠らなくて、いつもデータを眺めているエコノミストであれば、マンデル教授の主張は正しいと実感できる。90年代前半、不況対策として公共事業を増大させていたときには為替レートは上昇していた。その後、公共事業を削減していたときには為替レートは下落した。97-98年不況に対応して公共事業を拡大したときには円高になった。今回でも、リーマンショック後の不況に対応するために公共事業を拡大したら円高になった。.

財政拡張政策を円高対策と呼ぶのは誤りである。円高によって生じた不況に対応するための円高後不況対策と呼ぶなら分かる。円高対策なら、円高を直接抑える対策のみが円高対策である。現在行っている非不胎化介入は円高対策になる。為替介入だけでは円高を抑えられず、日本の通貨量を拡大しなければならないというのが最近の実証分析のコンセンサスである(ただし、正しいタイミングで行えば介入だけでも円高対策になるという説もある)。円でドルを買えば、市中に円が流れる。それを日銀が吸収するのが不胎化で、吸収しないのが非不胎化である。不胎化であれば通貨量が増えないが、非不胎化であれば通貨量が拡大する。為替レートとは円とドルとの交換比率であるから、ドルが増えているときに円が増えなければ円高になるのは当然である。リーマンショック以来、ドルは猛烈に増えている。中央銀行が直接コントロールできるマネタリーベースは、アメリカが3倍に増やしているのに、日本は1.1倍にしか増やしていない。円高対策のためには、円を増やさなければならない。円高対策と、円高後対策の区別が重要だ。>