槍ヶ岳(2011年7月)

休暇を取って、槍ヶ岳奥穂高岳に登って来ました。
 
「いきなり槍・穂高?」と思われるでしょうが、どちらも単純往復するだけなら、初級・中級のコースであると、ガイド本には書いてあります。もちろん、初級と言ったって、高尾山と同じレベルではありません。富士山程度なら登れる体力の人が、槍・穂高に挑戦する場合、それぞれの単純往復なら十分可能である、ということらしいです。私は、高校生の時、富士山に登っています。
 
実際、可能でした。帰ってきて、このように旅行記を書いているわけですから。
 
新宿を夜行バスで発つと、朝6時ごろ、上高地に着きます。しっかり眠ろうと思い、「グリーン・カー」という上級(といっても価格は大して変わらない)サービスで行ったのですが、ほとんど眠れませんでした。途中、何度もサービス・エリアで停車し、その都度、照明が点いて車内が明るくなるのです。ようやく朝方、落ち着いて眠れる感じになってくると、目的地に着いてしまいます。
 
このバスは、昼の便もあり、7時半に新宿発、12時上高地着で、ほとんど止まらなければ、約4時間半で着いてしまうのでです。ただ、昼の便で行くと、その日は3時間歩いて横尾まで辿り着くのが精一杯で、明日の日程がきつくなります。横尾からだと、通常コースタイムで槍ヶ岳山荘まで7時間近くかかることになっています。
 
靴を登山用に履き替え、余分な荷物を預け、入山届を提出し、ゆっくり朝食を摂り、8時ごろから歩き始めます。写真は有名な河童橋。あいにくの天気で、穂高連峰は全く見えません。
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横尾までは3時間程度の平坦な散策コースで、途中、1時間ごとに、明神、徳沢という休憩所があります。通常タイム通り、3時間で横尾に着きました。ここは、槍ヶ岳方面と穂高方面の分岐になっています。橋を渡れば涸沢を経由して穂高岳、渡らずに右に進めば槍ヶ岳です。
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1時間ほど休憩してから右に進み、2時間弱歩いて、槍沢ロッジに着きます。今夜の宿泊先です。2段ベッドのうなぎの寝床で、最初はどうも馴染めませんが、睡眠不足で5時間歩いて疲れたせいか、よく眠れました。
 
山小屋の朝は早く、客たちは4時ぐらいからゴソゴソ動き出します。朝食は5時で、だいたい6時にはみな出発します。今日は標準タイムでは4時間半の行程です。歩き出しはこんな感じです。あいかわらず天気が悪い。
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4時間ほど歩き、ようやく槍の穂先が見えてきました。
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少し行くと、播隆窟があります。19世紀にこの山を開山したと言われる僧がこもって修行した庵室です。左上に槍の穂先が少しかかるように写真を撮りました。
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ところが、このあたりから俄然体調が悪くなってきました。2,30歩歩いただけで呼吸が大きく乱れ、整えるために座り込んでしまいます。呼吸が落ち着いてくると、今度は、強烈な睡魔に襲われます。実際、とてもいい気持なのです。このままここで横になってしまいたいのですが、これが高山病の症状であることは理解していました。とにかくいい気持だけど、なんとなく手足に力が入らない。ここだったら楽に自殺できると思いました。
 
途中、少々道を間違えて後戻りしたりしたこともあり、結局、槍の穂先が見えだしてから3時間もかけて、ようやく午後1時半ごろ、槍の肩に辿り着きました。合計7時間半かかってしまいました。通常タイムの6割増しですね。
 
早速、槍ヶ岳山荘にチェックインしました。相変わらず天候が悪いので、槍の穂先には登らず、山荘に入りました。幸い、先ほどの眠気は消えていました。しかし、しょせん2段ベッドのうなぎの寝床で、自分のスペースでは横になるしかすることがないので、ついウトウトしてしまいます。高山では、すぐ横になることは血中酸素飽和度の低下を招き、好ましくないとされています。
 
ふと窓の外を見ると、何と日が射しているではありませんか。早速、カメラを手にサンダルをつっかけて外に飛び出します。
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とてもいい天気に見えますが、これは一瞬なのです。ほどなく霧に包まれ、真っ白になってしまいます。実際、穂先に上がっている人、少ないでしょう。クリックしてみてください。
 
少し下手に回ると、「小槍」「曾孫槍」が見えます。左側のせり出しが小槍で、霧でぼやけている大槍との間にある小さい突起が曾孫槍だそうです。この角度からでは孫槍は見えません。
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一夜明けた槍の穂先です。これも良い天気のように見えますが、一瞬です。実際、太陽は雲のかなたで、いつ夜が明けたのか、まったくわかりませんでした。
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そもそも、多少なりとも視界が開ければ、稜線からの眺望の写真が撮れたはずです。それがまったくないんですから、今回の槍登山の天気は残念というしかありません。
 
当初、この日は、大喰岳、中岳、南岳と稜線を歩き、大キレットから北穂高岳までの眺望を写真に収めてから、天狗原経由で下山しようと計画していたのですが、こう稜線が真っ白では展望が開けません。私は、高いところに登ることはそれほど目的としておらず、絶景ポイントに行きたいだけなのです。天候が悪ければ、稜線歩きの価値は大幅ダウンです。
 
というわけで、2時間ほど山小屋で粘って晴れるのを待った後、あきらめて、来た道をそのまま下山しました。途中、2度ほどゆっくり休憩したとはいえ、横尾までの下りに8時間半も費やしてしまいました。私は左膝がちょっと悪いのでバネが効かず、下りで加速できないのです。横尾到着は4時半で、予約していたからよいものの、稜線を回り道して天狗原経由で下山していたら、横尾山荘に着くのは夜だったでしょう。