奥穂高岳(2011年8月)
穂高連峰というのは、やはり困難な山です。というのは、普通に歩いて登って行けば、体力は消耗するが何とか頂上に着く、というわけではないからです。
それでも、その中で一番容易なのが奥穂高岳なので、初心者はまずここを目指します。一番容易なのに最高峰、というのも都合がよい。子連れの大人も多い所以です。ザイテングラートというのは、その一番容易な岩場なのです。
私は、槍から下りた後、横尾に一泊し、その後の方針を考え直しました。元々は、奥穂に登る計画だったのですが、槍ヶ岳でのパフォーマンスがあまりに悪く自信喪失してしまいました。とはいえ、すぐ帰るのはアホらしいので、本日は天気も良さそうだし、横尾周辺を散策して一泊し、明日帰ろうと決めました。
朝、8時ごろ、荷物を横尾山荘に置き出発しました。持っているのは水1.8リットルとカメラ、ストックのみ。これでとりあえず、本谷橋まで歩いてみようと思いました。このコースからは屏風岩が望めます。
本谷橋までは標準タイム(1時間半)で着きました。河原は格好の休憩所になっています。
こうなると欲が出て、絶景ポイントとして有名な涸沢まで行ってみようと、再び歩き出します。登りは急でしたが、2時間で到着しました。横尾から涸沢まで合計3時間半は、標準タイムの2割増しですが、昨日までと比べるとまずまずです。やはり、荷物が軽いのが効いているようです。
まだ午前中とはいえ、ここからさらに標準タイム3時間の登りに出かけるのは億劫でした。とはいえ、ここまで登ると下りるのももったいないので、今日は涸沢ヒュッテに泊まることにしました。元々、奥穂にフルで登る予定でしたから、日程の余裕はあります。
とはいえ、天気は再び悪化し、涸沢の大雪渓の眺めも冴えません。
翌朝も天気はイマイチ。しかし、やはり午前中は日が出ると予報されています。思い切って、穂高岳山荘が建つ山頂稜線まで登ることにしました。
約1時間半でザイテングラートの取り付きに出ました。日も射してきて、ここからの前穂北尾根の眺めは、まるで絵葉書のようです。
ここはちょうど良い休憩ポイントで、かつ、ザイテングラートから山頂稜線にかけての見通しが良い。この写真で、ザイテングラートは正面の緑の丘で、山頂稜線は、この奥の雲に隠れています。この写真を見る限り、大したことないように見えます。
しかし、実際は、けっこうきつい岩場の登りなのです。これは下りに撮った写真ですが、稜線から少し下りてきたところです。これで多少は厳しさが伝わるでしょうか。
ザイテングラートの登りは2時間5分でこなしました(ザイテン取り付きで15分休憩した)。標準タイムの5割増しですが、合計では3時間50分と、標準タイムの3割増しにとどまっています。今、午前9時50分です。3000メートル稜線(2996メートル)にもかかわらず高山病(睡魔)がまったく出なかったのは、さすがに身体が高度に慣れてきたからでしょうか。
穂高岳山荘と奥穂岳山頂の一部。山頂はこの岩塊の裏に隠れて見えません。天気が良いと思うかもしれませんが、これまた一時的な青空で、次の瞬間には再び雲に覆われてしまいました。
1時間ほど休憩して11時を回りました。問題は、このあとどうするかです。山頂まで行くとすれば、標準タイムで行きが50分、帰りが40分です。山頂での休憩を入れて2時間でしょう。私の能力では2時間半かかるかもしれません。この天候では、山頂からの眺望はおそらく冴えません。日程上、明日は下山しなければならない。本日、この山荘に泊まれば、明日は、稜線-涸沢-横尾-上高地という10時間近い長距離となり、明日のうちに都会へは戻れません。残念ながら、山頂はあきらめて下山することにしました。
11時半に下山開始。涸沢ヒュッテに辿り着いたのは、ようやく3時10分でした。なんと3時間40分もかかってしまいました。膝が悪く、加速が効かないからこうなる。登り下りで8時間くらい歩き、本日はもう限界です。再び涸沢ヒュッテに泊まることにしました。明日、早朝に発てば6時間+アルファで上高地に辿り着けます。
この決定は大正解でした。おかげで、このあたり第一の絶景ポイントである涸沢から、好天の穂高の写真を撮れました。夕方にかけて急速に天候が回復したのです。今頃山頂に居ればジャンダルムの絶景が撮れたのにという思いもありましたが、穂高連峰のアーベントロート、モルゲンロートが撮れたんだから、不満はありません。
拡大するとこうなります。
少し時間が経って、黄色く変わってきました。