消費者が発電方法を選択

先週末(27日土曜日)のNHKの「脱原発」討論ですが、全面的に素人参加型でしたが、巧妙にヤバイ人が排除されていて、建設的な議論になっていました。

その中で、電力自由化した国の例としてスウェーデンが取り上げられ、彼国では、家計が発電方法を「石油」「原子力」「水力」「風力」などから自由に選択できるとのこと。

当然、原子力が一番安く、風力が一番高い。しかし、自由化すれば、発電方法ごとに価格が異なるのはあたりまえ。

しかるにスタジオの脱原発派の女性が、「日本でやる場合は、原子力はメニューから外してください。原発は事故が起きると自然エネルギーを使っている人にも被害が及びますから」と絶叫していました。

これも一理あって、これまで原発は事故のコストや立地の際に住民に払う補償を発電コストと考えず、「安い」と宣伝されてきた面があります。当然、こういうものも考慮して価格設定がなされるべきでしょう。

つまり、原発によって発電された電力の価格の大きな部分が保険料、ということになります。

このような保険が設計できるかどうかは、最近の理論研究のホットな話題で、Weitzmanのカタストロフの論文(2009)以来、熱い議論となっているようです。

http://dash.harvard.edu/bitstream/handle/1/3693423/Weitzman_OnModeling.pdf?sequence=2

つまり、分布のfat-tailのおかげで、通常の費用便益分析を解いた解がカタストロフの損失をカバーできないみたい。

もっとも、いろいろ効用関数を工夫することによってこの問題を回避することもできるようです。最近も、そういう論文の発表を一つを聴きました。その回避の仕方が不自然、という批判が出てました。いろいろ難しいようです。

もう一つの問題として、「千年に一度」の震災に備える保険ですから、基金の規模が巨大になります。巨大な金額を流動資産として積み立てると、震災は千年に一度しか来ないわけですから、ムダではないか、という批判が出てくると思われます。

そこで普通は、現金以外のポートフォリオが大半となるわけですが、その場合、金融危機の原因となる可能性がある。

今度の震災でも、日本の保険会社が大量のドル資産を円に換金するといううわさが流れ、急激な円高となりました。もちろん、保険会社は金融工学を駆使して流動性管理を行っているわけでしょうが、こういう大きなマクロのショックが起こると、fat-tailの事象が想定外の高確率で起こってしまいますから、そういう管理で危機を回避することはできない。これは2008年の危機と同じ問題です。

金融商品の場合なら、fat-tailに陥らないように、ポートフォリオを制限するという規制が実施される。自己資本比率とかですね。しかし、震災の場合、神様が決めているのですから、fat-tailを避けたいなら原発をやめるしかなくなります。