梨価格下落は風評被害?

風評被害ったって、鳥取県産の梨が放射能汚染したという風評が立ったわけではない。

汚染の風評で東京で売れ行きが悪くなった福島県産の梨が関西の市場に流れ、梨の供給が増えて、鳥取県産の梨が値下がりした、というわけ。

こういうのまで風評被害に含めるべきかは、議論のあるところでしょう。

こういう間接的影響を考慮すれば、「原発事故で利益を得た人」もいた、ってことになりはしないかな。例えば、一時的に西日本へ需要がシフトしたとか、関西の不動産価格が上がったとか、ありましたよね。こういう利益は正当なのか、不当なのか、問われなくてよいのでしょうか。

TPPでは、関税撤廃で利益を得た人は、社会に何か還元すべきなのか、しなくてよいのか?しなくてよいなら、TPPで得をした人から損した人への所得移転は、正当な理由がないからしなくてよいということになるはずだ。

損害賠償請求ができるのは、自分に責任のない、不当な損失だからですよね。

しかし、例えば、ベランダ側に新しいマンションができて、眺めが悪くなって自分のマンション価格が下がった、というような場合、自分に責任はないけれど、新しいマンションに補償義務なんてないですよね。

原発事故は、被害と関係なく、それ自体として不正だからか。しかし、これは無理でしょう。原発事故で被害が発生したから不正不当であるわけで、事故それ自体が悪いことではない。放射能健康被害をもたらす可能性があるから原発事故は悪いのであって、被害とは別に悪があるわけではない。隣のマンション建設とどこが違うのでしょうか。

命にかかわるから?

命にかかわるのは、放射能汚染された農産物を食べる人かもしれないが、鳥取の梨生産者ではないですよね。30%の値下がりで生活が苦しくなって命にかかわる?

しかし、リストラされて収入がなくなった人は、同じ理由で命にかかわるが、リストラ自体、悪ではありませんよね。

突っ込んで考えればわからなくなる論点ですね。

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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111019-OYT1T00946.htm?from=top

鳥取県平井伸治知事は19日の定例記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、同県産の梨などの農産物が値下がりしているとして、近くJA県中央会などと協議会を設立し、東電への損害賠償請求を検討することを明らかにした。


 県によると、風評被害で販売不振となった福島県産の梨が販路を求めて関西地方の市場に出荷されるなどしたため、鳥取県産の二十世紀梨の単価は、全国の市場で30%下落したという。請求すれば、原子力損害賠償紛争審査会が「中間指針」で定めた風評被害の対象地域以外では初めてのケースとなる。

 平井知事は「訴えるべきことはしっかり訴えて、農家の不安解消に努めたい」と話した。

(2011年10月19日20時01分 読売新聞)>