過酷事故は原発1基あたり500年に1回

コスト的には2割増しというのは、思ったよりは小さいんですね。

もっとも、原発推進派の試算ということは割り引かなければならないのでしょうが。

しかし、過酷事故が「500年に1回」とされたことは、IEAの安全基準「10万年に1回」に比べて大幅な増加です。だって200倍高い頻度を認めたということは、大きな譲歩でしょう。

とはいえ、この500年に1回というのは原発1基あたりですから、日本中にある原発すべてを考慮して、何年に1回の過酷事故を新たに想定したことになるのか、知りたいですね。例えば、50年に1回、今回のような過酷事故が日本のどこかで起こるということになると、原発推進は難しくなるのではないか。

だって、日本に原発が50基あるとして、年、年平均6ヶ月運転するとすれば、20年で500年に達してしまいますよ。

昔は少ない原発で、1980年ぐらいまではやっていたわけです。その後、原油高や環境問題を反映して原発の数が増え、運転時間の累計も早く増えるようになっているわけで、1基平均500年に1回というのは、けっこう大きい気がします。

ヘンな話ですが、1度に必ず5基が過酷事故を起こすと想定すれば、100年に1回の過酷事故ということになり、むしろ社会の許容度は大きくなるのでないか?

******************************************************************

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111025-OYT1T00701.htm?from=main1

原子力発電所事故に伴う損害額などを試算する内閣府原子力委員会の小委員会(座長=鈴木達治郎・原子力委員長代理)は25日、日本の原発が過酷事故を起こす確率は最大で500年に1回で、1基あたりの標準的な損害額は3兆8878億円、将来の損害に備えるために必要な費用は、従来の発電コストの約2割にあたる1キロ・ワット時あたり1・1円とする試算を発表した。

 政府機関が原発事故のコストを算出したのは初めて。また、使用済み核燃料を再処理して使う「核燃料サイクル」の費用も7年ぶりに再検証し、再利用せずに地中に埋めて捨てる場合に比べて約2倍になるという結果を示した。

 二つの試算結果は、今後のエネルギー政策を検討するための基礎資料になる。この結果は近く、発電方法別に発電コストを比較検討する政府のエネルギー・環境会議に報告される。

 事故の損害額は、東京電力の経営状況を調査する政府の第三者委員会が、福島第一原発事故による周辺住民らへの賠償や除染、廃炉などの費用を積み上げて導き出した事故後2年分の損害額(3基分で5兆5045億円)を使用。さらに小委員会が独自に算定した3~5年目の損害額を加えて、1基(120万キロ・ワット級)あたりの額に換算した。

 日本の原発が事故を起こす確率は、全国の原発がこれまでに延べ時間数で1400年あまり稼働してきたなかで福島第一原発1~3号機が過酷事故を起こしたことを根拠に、「500年に1回」と算定。

 これをもとに事故に伴うコストを計算すると、1キロ・ワット時あたり0・9~1・2円となった。標準的な稼働率70%の場合は1・1円。こうした事故が起きる確率として国際原子力機関IAEA)が新設炉に求める安全目標値は、「10万年に1回」だった。

 また、使用済み核燃料の処理に伴う費用は、すべてを再利用する「再処理」だと1キロ・ワット時あたり1・98円、一部を再処理して残りを中間貯蔵する「現状」だと同1・39円、すべて地中に埋める「直接処分」だと同1・00~1・02円と試算された。

(2011年10月25日13時54分 読売新聞)>