交易条件って、意味ある?

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「交易条件の改善なくして『失われた時代』からの脱却はないだろう」などと。もっともらしく書きましたけれど、疑わしくなってきました。

これは、平成21年版「厚生労働白書」ですが、交易条件の長期的推移を紹介しています。

http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaa200901/b0062.html

これを見ると、何と、交易条件は1960年代が今より圧倒的に高いのです。長期的に交易条件は悪化の一途を辿っている。

日本の貿易がもっぱらドル建てで行われてきており、かつ過去の資源価格が非常に安かったとすれば、この趨勢はおかしくありません。昔は、首尾よく輸出できれば、高価なドルを入手できる一方、原材料価格は安価にとどまっていたので、交易条件が高かった。

為替レートとの関係を見ると、内閣府の分析では「円高は交易条件は改善する」となっていますが、長期的なデータは「円高で交易条件は悪化する」ことを示唆しています。だって、過去数十年、一貫して円高傾向でしたから。一時的に交易条件が急速に悪化したエピソードが80年代前半にありますが、当時は「強いドル」を掲げるレーガン政権の下、ドル高で米国の「双子の赤字」が問題になっていました。「円安で交易条件が悪化する」という教科書的、あるいは白書に書かれているようなことが起こったのは、この時期だけです。

小泉政権は円安で日本製品を安売りして交易条件を悪化させた」なんて批判をする人がいて、私も「そんなもんだろ」と思っていたけれど、どうも疑わしくなってきました。長期的には、交易条件の悪化は円高進行をともなっていますから!

経済成長の初期段階で外貨獲得が重要とされるのは、交易条件が高いために輸出に成功すれば高額の収入を得られる、という意味でしょう。

経済成長というのは、交易条件が悪化する、ということかもしれませんよ。だって、日本の場合はそうですから!

一つの解釈として、日本の市場が閉鎖的で、安い外国製品をほとんど輸入していないから、ということが考えられます。国際貿易のメリットをもっと利用すれば、高コストの国内生産を安い輸入品に代替してゆくことによって交易条件を上げる、ということが考えられる。