財政赤字拡大は円高?円安?

まあ、このへんのところは経済学者もゴマカシ、ゴマカシなんだよね。

増税や歳出削減が円安要因であるというのは、標準的なマンデル=フレミング・モデルではまさにその通り。

しかし、現在、欧州を中心に、財政赤字の拡大がユーロ安を招いているように見えるのは事実。

この違いはどこにあるかというと、借金を返すか返さないか、という前提の違いにある。

財政赤字の拡大が通貨高を招くのは、あくまでも借金返済が前提。必ず、返してくれるとわかっているなら、借金をしてくれればその分金利高になり、投資家は歓迎ですよ。

これに対して、財政赤字の拡大が返済可能性の低下を意味するなら、反対に通貨安の要因になる。

実を言えば、経済学者も、この二つの場合をどのように使い分ければいいか、わかっていない。テレビの経済番組で知ったかぶりで語る「市場関係者」も、わかっていないのは同じ。

しかし、話はこれだけでは終わらない。

借金の返済を前提としても、財政赤字の拡大が通貨安を招く、という理論がある。「物価水準の財政理論」というやつ。

これによれば、財政赤字が増えると、他の事情を所与として、政府債務が持続可能であるためには物価が上がる必要がある。その結果、通貨安になる。この場合は、形式的には借金を返しているけれど、物価上昇で返すのは邪道、と考えられる。実質的には返さないのと同じ、とも言える。

通常、「借金を返す」というのは政府支出を削減したり増税したりして将来の財政余剰を増やすことである。これを「リカーディアン・レジーム」と言う。

これに対して、物価上昇で債務の実質価値が下がって何とか破綻しない、という状態を「ノン・リカーディアン・レジーム」と言う。リフレ派や上げ潮派が考えているのはこっち。

つまり、「借金返済」と言っても、全然違う考え方があるわけで、それぞれの使い分けについて経済学者の間で確たる合意があるわけではない。

ただ、大方の経済学者は土居氏のように考えているとみなしてよい。つまり、あくまでも借金を返すことが前提で、しかも、返済方法は財政余剰の増加(増税+歳出削減)となれば、財政赤字拡大は通貨高要因と考えてよい。(逆に、財政赤字縮小は通貨安要因。)

しかし、市場がそのように考えてくれるかどうかは別なところがやっかいだ。欧州の場合は明らかに、返してくれないか、返すにしてもインフレで、と市場が考えているので、財政赤字拡大が通貨安を招いているとしか思えないよね。

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http://twitter.com/takero_doi/status/208454119348908033

<消費税増税を含む財政収支改善策は、公債発行抑制で金利低下圧力になり、国際的金利裁定働き円安要因になります。消費税増税のこの要因では円高にならない。他要因は別の考察必要RT @yoshiyuki94: @takero_doi 日本が消費増税を決めると余計に円高がすすまないですかね?>