日本にアップルは要らない?

という話。

先日のNHKスペシャルも、何とか最終財で日本ブランドを売らなければ、という脅迫観念に取りつかれた内容で、違和感を感じた。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/1027/

出てくるのは最終財の話ばっかり。ダイキンが取り上げられていたのはよいとしても、家電ベンチャーがわざわざフィリピンで電動バイクを売らなくても別にいいじゃないか、という気がしたね。

ソニーパナソニック、シャープ・・・が凋落しても別にかまわないけれど、こういう表面に出てくる現象を口実に「改革、改革」と騒ぐ連中が多いので困る。

**********************************************************

http://news.nicovideo.jp/watch/nw135840

<日本の製造業、もっと言えば日本経済の象徴のようなトヨタソニーなどのさらなる苦戦が予想され、「日本の製造業は落日の一途を辿る」という悲観論がますます喧伝されるに違いない。

だが、極端に言えば、トヨタソニーの製品が海外で全く売れなくなっても、日本経済はもちろん、日本の製造業の屋台骨は揺るがない。

10月14日に発売が開始されたアップルのiPhone4Sは、早くもメガヒットの様相を呈しているが、それが売れれば売れるほど笑うのは日本である。昨年12月17日付ウォール・ストリート・ジャーナルがアジア開発銀行研究所などの資料を引用して明らかにしたことだが、iPhoneの部品のうち日本製が占める割合は34%と、断トツだからだ(2位はドイツの17%、3 位は韓国の13%)。

同様に、次世代の中型旅客機であるボーイングB787 の場合も日本製部品が占める割合は35%。例えば、主翼を製造しているのは三菱重工業だし、機体の素材に使われている最先端の炭素繊維東レ製だ。

こうした例が示すように、日本の中間財・資本財は世界市場で圧倒的に強く、輸出に占める割合も非常に高い。ジェトロ日本貿易振興機構)の「財別輸出」のデータを見ると、2010年の場合、「工業用原料」が25.0%、「資本財」が52.7%で、計77.7%にも達する。これに対し、最終消費財である自動車などの「耐久消費財」は14.9%にすぎない(金額ベース)。輸出産業というと自動車や電機というイメージが強いが、日本が海外から“カネを稼ぐ”主力は中間財・資本財なのだ。

例えば、各種製品を作るために不可欠の金型、あらゆる機械製造業のマザーマシン(機械を作るための機械)である数値制御工作機械、あるいは工業用ロボット、半導体製造に不可欠のステッパーのような資本財、ボンディングワイヤ、フォトレジスト、フォトマスク、シリコンウエファー(いずれも半導体関連の素材ないし部品)といった中間財は日本の独壇場だ。

建設機械も、20年前まではアメリカのキャタピラー社が世界市場をほぼ独占していたが、今や世界を席巻しているのはコマツ日立建機、コベルコ建機の3社だ。キャタピラー社製が重厚長大で使い勝手が悪いのに対し、日本製は軽量小型で性能がよく、頑丈。中国製は安いが、寿命が1、2年と短いのに対し、日本製は5年である。しかも、GPSが内蔵され、盗難にあっても秘匿場所が特定できる。シャベルを交換すべきタイミングも、内蔵チップとメーカーのコンピュータのやりとりで自動的に教えてくれる……。
まさに至れり尽くせりだ。

3月の東日本大震災の際、こうした中間財・資本財メーカーの工場の一部も被災し、製品の供給が一時的に止まった。そのため、自動車を始め世界の最終消費財メーカーは生産停止ないし縮小に追い込まれた。最終消費財の場合、これまで使っていたモノが入手できなければ、消費者は少々品質が落ちても他のモノ、安いモノで代替する。

だが、企業が生産のために使う中間財・資本財はそういうわけにはいかない。日本製の素材、部品、機械を使わなければ作れない製品が山のようにあるからだ。これは廉価な中国製品でも同じで、半導体チップ、ガラス基板など、電子機器製品の中枢を担う部品はやはり日本製が多い。大震災は図らずも、日本の製造業の存在の大きさを世界に思い知らせた。>