ベースマネーの対名目GDP比

日本銀行がこれ以上の金融緩和に消極的である理由の一つは、対GDP比で見た日本のマネタリーベースは、欧米よりすでにだいぶ大きいということです。

http://www.distressedvolatility.com/2012/09/ratios-of-monetary-base-to-nominal-gdp-japan-us.html

この記事の元ネタは、白川総裁の昨年4月の講演です。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120326a2.pdf

確かに金融危機前と比べると、欧米のマネタリーベースは2倍から3倍に拡大しています。これに対して、日本のそれはせいぜい数十%しか増えていない。「だから日銀はやる気ない」と批判されるのですが、対GDP比で見たらすでにかなり大きいことは事実。

関連する懸念として、ゼロ金利を脱した時、ベースマネーと名目GDPの関係がどうなるかという問題があります。

これは以前も紹介した岩本さんのページ。

http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/35329635.html

かつてゼロ金利になる以前は、貨幣供給と名目GDPの間にいわゆる数量関係が成立しており、具体的には500兆円のGDPを40兆円のベースマネーで回していた。この関係がゼロ金利時代には失われ、今やベースマネーは120兆円に達しているがGDPはやはり500兆円しかない。したがって、仮にゼロ金利を脱出して数量関係が復活した場合には、名目GDPは低めに見積もっても1200兆円に達する必要がある。しかし、これは短期的に大きな(ハイパー?)インフレなしには達成できない数字である、というわけ。

私は、この問題に関して、リフレ派の人から説得力ある説明を聞いたことがないんです。

例えば、インフレ率が首尾よく2%に達したとして、その時、120兆円のベースマネーに対応する名目GDPが500兆円でいいのか?ということですね。

私は、どっちが正しいという判断の根拠は持っていません。

ただ、普通に考えれば、2%のインフレでは現金保有は不利なので、人々は利付資産に預け替えようとします。その際に日銀に現金が還流するから破綻する、というのが斉藤さんストーリーです。バランスシートの右側が縮小するから左側の資産を圧縮しなければならない。しかし、すでにインフレと金利上昇でキャピタルロスを被っている国債を売ることによって、日銀はさらに大きな損失を被るというわけですね。

そういう悲劇的なことは起こらず、マイルドなインフレをともないつつベースマネーが縮小して、あらためて例えば50兆円ぐらいのベースマネーで名目GDP500兆円ぐらいのところから再スタート、ってことになれば、みなハッピーなわけですけれど。

要は、金利上昇によって日銀保有国債がどれだけキャピタルロスを被るか、という試算をどこからか探して来ればいいわけだが。