育休を3年間に延長するという件

育休を3年間に延長するという話、男性のみならず女性の論客にまで評判がよくないようです。NHKニュースWebの月曜日のおばさんも批判めいたことを口にしていた。

しかし、女性はいつでも3年以内なら自分の好きなタイミングで復職できるんだから、交渉力が強化されることは確かであり、女性まで反対する理由はないのではあるまいか。

もちろん、企業が嫌がって結婚する女性社員の肩叩きを強めるということはあるだろうが、そういう不当なことを理由に権利主張を引っ込めろ、というのはかえっておかしな話だ。

労働組合を作れば企業は嫌がる。しかし、労働者の権利なんてものは労働組合がなければ守れない。それと同じですよ。

政府がこういう政策を持ち出したのは、女性の就業と少子化対策、待機児童問題を一挙に解決しようというわけなんだろう。女性に十分な時間を与えて子育てさせれば子供を産む、と考えたのではあるまいか。待機児童対策が保育園の充実ではなくて母親の役割になっているのは、「子供は家族が育てる」という自民党イデオロギーのゆえか。

もっとも私は、女性が専業主婦になれるよう、男性の雇用を安定化した方が、よほど少子化対策になると思っているけれどね。

最後に、城があいかわらず「労働市場の流動化にしぼれ」などと言っているのは、ポジトークだろう。

ところで、経済学の一般的な考えでは、子供は私的財であり、公共財ではない。したがって、政府が公的資金少子化対策をする必要はないが、例外がある。

それは、年金が賦課方式である場合だ。これは今の我が国に当てはまる。

西村和雄先生の古典的な論文を読みなされ。

Pay-as-you-go public pensions with endogenous fertility
Kazuo Nishimura and Junsen Zhang
Journal of Public Economics
Volume 48, Issue 2, July 1992, Pages 239–258

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/004727279290029F

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http://blogos.com/article/61064/

<現在の公務員方式(つまり、原則、最初の一年は賃金の一部が給付金として
支払われ、あとの2年は無給だが復職できる権利をキープできる)を民間にも
適用するとした場合。

そもそも多くの家庭では専業主婦をやる余裕がないから働きたいというニーズが
あるのであって、「無給で2年間家にいてもいいですよ」と言われたからといって
「はいそうですか」と家にいる人は多くはないだろう。

実際、筆者の知る限りでも、1年以上の育休を取得している公務員はほとんど聞かない。
要するに、この場合、政策としてはほとんど意味がないということになる。

仮に、追加の2年間も誰かが何らかの給付を行うという場合。
その場合、確かに「じゃあ保育所に預けないで自分で面倒みよう」と考える家庭も
あるだろう。ひょっとすると待機児童問題も解消するかもしれない。

ただ、その場合、Maxで3年も休ませなければならない企業は、女性の採用数を
絞るか、結婚や妊娠を機に女性の肩を叩いて辞めさせることになるだろう。
そもそもの政策の目的である「女性の活躍できる社会の実現」からは、むしろ後退
することになるはずだ。

というわけで、安倍さんは一生懸命バットを振ろうとしているのだけど、単なる空ぶり
に終わるか、当たったら当たったで凄い自打球になりそうな予感がしている。

ちなみに筆者の意見は、問題の本質は育休期間の長さではなく、ひと段落した後に
(職場復帰にせよ再就職にせよ)キャリアのメインストリームに戻りづらい雇用慣行
にこそあるというものだ。

だから、変な球には手を出さず、ここは労働市場の流動化一本に絞ることを
おススメしておきたい。>