「外れ馬券も必要経費」の判決

これ、妥当な判決と思いますけれど、検察も、当たり馬券については購入代金を経費として認めてるんですね。ということは、投資としての性質を認めているわけですよ。

とすれば、外れた方も経費を認めるべきではないでしょうか。元手がかかったのに収入ははゼロだったんだから。

株式投資の特定口座では、年間を通じて損益を合算して納税額を計算しますよね。それと整合的な処理が妥当ではないか。

そもそも宝くじと同様、競馬等公営ギャンブルは、自治体等がまとまった金額をピンハネしてますから、非課税となっている宝くじとのバランスも問題になるでしょう。

つまり、競馬の場合も、馬券購入代金の相当分が納税されており、それを考えれば非課税という反対方向の解決もありえます。

問題は、システマティックに勝てる方法をこの人が見つけてしまったことです。これは効率市場仮説に反するので経済学者にとって由々しき事態ですが、株式投資だってうまい人はコンスタントに勝っている。とすると、性質上、この人の活動は株式投資などに近いとみなして同様の課税処理をするのが妥当と考えます。

平均的には、公営ギャンブルをやる人は大損しているわけです。それを「一時所得」として経費を認めないなら問題はないが、経費を認めて総合課税すると税務署としてはたまったものではない。というより所得税制度が崩壊しかねない。

金融所得と同様、分離課税とし、年間の損益を通算できるようにすれば、ほとんどの人は損しているわけだから課税上の問題はない。もうけている人はこの人みたいに稀であり、かつ公営ギャンブルは元手のかなりの部分が税金なのだから、分離課税できれば十分と思います。

***********************************************************

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130523-OYT1T00605.htm?from=main1

<競馬の予想ソフトを使って大量に馬券を購入し、配当で得た約29億円の所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた元会社員の男性(39)に対する判決で、大阪地裁(西田真基裁判長)は23日、所得から控除できる必要経費について「当たり馬券の購入額だけだ」とする検察側の主張を退け、「外れ馬券分も必要経費に含まれる」との判断を示した。

 そのうえで、検察側が主張していた課税額約5億7000万円を大幅に減額して約5200万円と認定し、男性に懲役2月、執行猶予2年(求刑・懲役1年)を言い渡した。

 「競馬の経費」を巡る司法判断は初めて。国税庁は1970年の通達で、馬券配当で得られた所得は「一時所得」としてきたが、判決は「男性の場合は、娯楽というより資産運用として競馬を行っていた」とし、先物取引やFX取引などと同じ「雑所得」にあたると判断した。検察側は控訴を検討する。

 判決によると、被告は2007~09年の3年間、競馬予想ソフトと、日本中央競馬会(JRA)のインターネットサービスを使って計約28億7000万円分の馬券を購入。このうち、約1億3000万円分の当たり馬券で計約30億1000万円の配当を得ていた。収支総額の黒字は約1億4000万円だった。

 裁判では、必要経費の範囲を判断するうえで前提となる「所得区分」をどう分類するかが争点になった。

 検察側は、「配当の有無は毎回偶然に左右され、それぞれ独立した偶発的な所得」として、所得税法上の「一時所得」にあたると主張。必要経費は「収入に直接要した金額」とする同法の規定に基づき、配当総額から当たり馬券の購入額を差し引いた半分約14億5000万円が課税対象として税額を算定、計約5億7000万円を確定申告しなかった、と主張していた。

 しかし、西田裁判長は「被告はほぼすべてのレースで大量の馬券を購入しており、現に大きな利益を得ていた。娯楽というより資産運用として競馬をしていたと言える」と指摘。「雑所得の場合は費やした支出を合算して経費とする」との同法の規定に従って、「外れ馬券の購入額や競馬ソフトのデータ利用料も経費にあたる」と判断した。これらを控除し、被告が申告すべきだった所得は約1億6000万円、課税額は約5200万円と認定した。

(2013年5月23日11時37分 読売新聞)>

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130523/k10014784071000.html

<判決のあと被告は弁護士を通じて、「全面的にこちらの主張を認めてもらった判決で感謝しています。控訴をするつもりはありません」というコメントを出しました。

また被告の弁護士は、「今後どのようなケースなら、外れ馬券が経費になるか、その境目を定めるのが難しい問題となる。国税庁は判決を真摯(しんし)に受け止め、競馬の払戻金はすべて非課税にするなど、制度を見直すべきだ」と話しています。>