目先の燃料・食品価格上げに振り回されていてよいのか?

バーナンキの有名論文:

Systematic Monetary Policy and the Effects of Oil Price Shocks
BS Bernanke, M Gertler, M Watson - Brookings Papers on Economic Activity, 1997 - JSTOR

オイルショック後の景気後退は、原油価格の高騰そのものの効果というより、
インフレを恐れて過度の引締めに走った金融政策の効果であるとしている。

マスコミは毎日、燃料・食品価格が上がった上がった、インフレだ、スタグフレーションだ、
と騒いでいるが、引き続きGDPデフレーターや賃金が低迷している以上、
金融政策は、デフレの判断で運営されるべきでしょう。

総務省統計局によれば、平成20年6月について

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

(1) 総合指数は平成17 年を100 として102.2 となり,前月比は0.5%の上昇。前年同月比は
2.0%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は102.0 となり,前月比は0.4%の上昇。前年同月比は1.9%の
上昇となった。
(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は99.4 となり,前月と同水準。前年同
月比は0.1%の上昇となった。

とのことです。

特に、食料とエネルギーを除く指数(いわゆるコア物価指数)では、
平成20年はようやく前年並みかややマイナスに推移しているとはいえ、
平成11年から19年にかけて一貫して顕著な低下が起こっていることに注目すべきです。

1999 -0.1
2000 -0.4
2001 -0.9
2002 -0.8
2003 -0.3
2004 -0.6
2005 -0.4
2006 -0.4
2007 -0.3

いずれにしても、今のところ、インフレと判断する根拠は弱いと思われます。
仮にエネルギー価格上昇が完全に転嫁されコア指数でも同規模の上昇が見られても、
それは正常な事態であって、引締めに転じるべきではないでしょう。

ところで、欧州は4%を超えるCPIの上昇で、ECBは利上げに動きましたが、
欧州の怪は、日本よりもアメリカよりも物価上昇が激しいのに、
通貨は上昇の一途をたどっていることです。
これは、普通の経済学の教えに反します。