平時の食料自給率向上を目指す必要はない

先進国における農業補助が世界的な農産物価格の低下を招いてきた、と書きましたけど、
最近の農産物価格の高騰が、我が国の食料自給率を引き上げているという話。

元々、安い食料価格と高い食料自給率は両立しないのです。
我が国のような山間僻地の農業では、どんなに政府が補助しても
国際競争力なんて付くわけもなく、自給率の引き上げなんて土台無理。

それでも、国際農産物価格が騰貴すれば自給率が上がる、ということは、
農産物価格が低迷する平時での自給率の低さは、それほど問題ではないことを示唆しています。

政府の補助金は、自給率の維持そのものを目指すのではなく、
国際相場が騰貴した時に備えて生産能力や技術を維持するための施策に充当されるべき、
ということになります。

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http://mainichi.jp/life/money/news/20080806ddm008020147000c.html

07年度の食料自給率(カロリーベース)が40%を回復したのは、国産麦などの豊作に加え、値上がりした小麦などとの比較で割安になったコメの消費増が背景だ。太田誠一農相は5日の閣議後会見で「心強い兆候だ」と期待感を示したが、これで自給率が回復軌道に乗ったとは即断できない。また、コメなど農産物の安値は農家には逆風になっている面もあり、自給率の本格的回復には生産・消費両面での政策が必要だ。【行友弥、工藤昭久】

 加工用などを除く主食用米の自給率はほぼ100%。このため、コメの消費拡大は食料自給率全体の回復に大きく寄与する。逆に言えば、過去の自給率低下は食生活の洋風化などでコメ消費が減り続けてきたことが大きな要因だった。

 農林水産省の統計によると、07年度の1人当たり年間コメ消費量は前年度比0・4キロ増の61・4キロ。95年度以来、12年ぶりに前年度を上回った。総務省の家計調査でも、2人以上の世帯のコメ購入量は今年1月から6カ月連続で前年同月を上回り、コメ消費の増加傾向が続いている。

 コメに割安感が出ているのは、小麦価格の世界的な高騰が背景。農水省は半年ごとに改定している小麦の売り渡し価格を昨年4月に1・3%、10月に10%、今年4月に30%と3期連続で引き上げた。パンやめん類などの製品価格も軒並み値上がりしている。

 一方、米価は昨年産の生産過剰などで低迷。コメ価格センターによると、07年産米の全銘柄平均価格(6月25日現在)は60キロ当たり1万5075円と、06年産より656円も下がった。

 スーパーなどでもコメの売れ行きは好調。イトーヨーカ堂では1~6月のコメの売り上げが前年同月を10~20%上回り、焼きのりやお茶漬けなど、ご飯と一緒に使う食材も年明け以降、2けたの伸びを示しているという。

 ただ、この傾向は一過性との見方もある。海外の小麦相場が落ち着けば、消費者が再びパンなどに回帰する可能性があるからだ。農水省は朝食でご飯を食べるよう勧める「めざましごはん」キャンペーンや、米飯給食の推進などで需要の定着に努めている。また、小麦粉の代わりになる米粉や飼料用米の普及など、コメの使途を主食用以外にも広げることで自給率向上を図る考えだ。

 福田康夫首相は先月2日、若林正俊前農相を首相官邸に呼び、自給率50%を目指すよう指示したが、そのための「工程表」作成などに取り組む太田農相は「このトレンドを確実なものにしたい」と意気込む。