トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(9/3)

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本日は、この旅の目的の一つである、トレ・チーメの見物。残念ながら、天候はイマイチで空は雲に覆われている。

前日にオロンゾ小屋(トレ・チーメの入り口)までの往復バス切符を買った。片道2.9ユーロで合計たったの5.8ユーロ。

朝8時38分にコルティナ発。30分ほどでミズリーナ湖に到着。バスは素通りせず、10分間の写真休憩。荘厳なソラピス山をカメラに収める。こじんまりとした湖で10分間の滞在で十分であった。
再びバスに乗り込み、20分ほどでオロンゾ小屋に到着(9時35分)。すでに相当の数のマイカーが駐車していた。早速、歩き出す。

最初、道は広くてなだらか。途中、ラヴァレード小屋にさしかかったところでトイレに行く。出てきたところで道を間違えてしまった。このあたりから登りになるのだが、どんどん岩山から離れていく。よく見たら、もっと山に近いルートをたくさんの人が歩いている。私は遠回りしてしまったようだ。

幸い、ほどなく尾根に到達し、道は一本に合流。ようやくトレ・チーメの三峰がそれらしい形を見せた。なるほど大きい。

尾根からロカテリ小屋がくっきり見える。これがトレ・チーメの正面の展望台である。正面から三峰を見るためには、そこまで歩かなくてはならない。三峰の形を横から確認したところで引き返すこともできるのだが、それでは後から後悔するだろう。4時間半の周遊コースとは、ロカテリ小屋まで往復することだったのだ。

それにしても絶景だ。名もない周囲の山が実に個性的な形をしており、立派な名前がついていないとは不当と思った。歩きながら時々振り返ると、トレ・チーメは少しずつ正面の姿を現してくる。
周遊コースは、トレ・チーメとロカテリ小屋を両端とするたらいのような形をしている。帰りは行きと反対側を歩き、トレ・チーメを一周する。

私は山沿いのよく整備された水平道を歩いていたが、どうも人が少ない。ふと気がつくと、山沿いの少し高い所にもう一本道があり、たくさんの人が歩いているではないか。
今さらそちらに移ることもできずしばらく歩いていると、はっきりとした踏み跡のある横道が見えてきた。ちょっとガレた感じではあるが、さしたる危険なく上に道に移れそうである。思い切って、そちらに移った。

最初、上の道は下の道同様、広くなだらかだった。ところが、途中からどんどん上昇下降が多くなり、道幅も狭くなり、一部、岩につかまりながら三点支持で横歩きしなければならないトラバース風のところもあった。やばいところに来てしまった、下の楽チンな道を歩いていればよかったと思ったが、今さらどうしようもない。なに、滑落しても下の本道まで落ちるだけで、すぐ助けてもらえるだろう。

私は左ひざに不調を抱えている。もう3年ぐらいそうである。医者に行ったが、要するに軟骨成分が失われて骨と骨が擦れて痛いのだと言われた。軟骨成分を注入してもらい、その後は、グルコサミンを呑んで、貼り薬でしのいでいる。だんだんこの膝が悲鳴を上げ始めた。どうしても速く歩けない。後から来た女性・子供、中高年カップルに道を譲る。

一度視界から消えたロカテリ小屋が再び見えてくるとゴールは近かった。急に道が広くなり、広々とした高台のお花畑に出る。もう9月ということで花は咲いていないけれど。ロカテリ小屋は目の前だ。ここまで、歩き始めてから1時間半強だ。みんな腰をおろして、銘々、サンドイッチを広げる。

日本人としては「水筒とおにぎり」と行きたいところだが、朝、バスターミナルで買った生ハム入りパニーニの残りを食べた。ロカテリ小屋まで行くと、みんなスープを飲んでいる。うまそうに見えたので注文してみた。味は微妙だったが、山歩きで温かい食事は何よりだ。正面からのトレ・チーメは雄大。思ったより、三峰それぞれの間に間隔がある。

11時半過ぎに下山開始。看板に「オロンゾ小屋まで1時間20分」と書いてある。帰りのバスは14時だから、余裕だ。

下りはけっこうきつい。ひざへの負担が重いのは、「幸潤」のCMと同じである。いったん谷底におり、そこからまた稜線まで上がるから、行きに比べて帰りははるかに高低差が大きい。途中、下りで一回コケて、尻餅をついた。大したことはなかったが、後ろの客に見られ心配され、恰好悪かった。

ひざはますます重くなる。前を行く老夫婦が道を譲ろうとするのだが、早く行けないのはわかっていたので、一緒にゆっくり進む。もちろん、次々と後ろから来る客に抜かれる。

三峰の谷底からの上りは長くきつかった。もう終わりかと思うとすぐまた先に上りが見える。トレ・チーメの周囲は相当長い。ようやく裏側に到達したところで、ほぼ1時間半経過。今、13時10分過ぎで、看板に「オロンゾ小屋まで40分」とある。ヤバい。膝の痛みをこらえて足を速める。

三峰の裏側はなだらかに傾斜しているが、滑落すれば谷底までゴロゴロ転がっていくだろう。右側が谷なので、左に重心を置いて歩く。痛みのある左足に大きく体重がかかるのでつらい。途中何回もバランスを崩しそうになった。北アルプスなどでも、滑落事故はなんてことはない稜線で起こるそうだ。写真を撮ることはあきらめ、必死で歩いた。

今、13時55分である。まだバス停は見えない。もはや絶望的だ。57分、ついにバス停が見えた。大きく手を振ったが、よく見ると違うバス。しばらく行くと、ついに我々のドロミティ・バスが見えた。すでに扉を閉め動き出していた。今、13時59分。必死で手を振り、走った。ぎりぎりで乗れた!

帰りのバスもミズリーナ湖に停車した。重い脚をひきずり降り、トイレに行く。

コルティナのバスターミナルのベンチに倒れるように座り、朝買ったパンの残りを食べ、水を飲む。途中、食欲はあまりなかったが、一仕事終えてリラックスしたのか、一気に食欲が解放された。

ホテルに帰ったのは15時半。昼寝をして、8時ごろ、昨晩と同じレストランに行く。