サッソルンゴを下る(9月5日)

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9月5日(日):サッソルンゴを下る

前日、Gardena Cardを買った。3日間バス+ロープウェイ乗り放題なのだが、ロープウェイは、乗れる場所がすごく限定されていて、最終的に元が取れなかった。これに対し、バスカードはぜひ買うべきだ。乗るときにいちいち金を出し入れしなくて済む。場所を間違えてヘンなところで降りてしまった場合でも、金を気にせず後続車に乗れる。

本日は、7時50分にホテルを出て、一番遠いポルドイ峠へと向かった。Ortiseiからバスで1時間ほど。峠を登り降り、そしてまた登るので、つづら折りの道が続き、ちょっと酔いそうだ。

この地域で最標高(2950メートル)にあるSas de Pordoiは生憎の天候。ほとんど雲がかかっており、展望がよくない。雲の切れ目から最高峰マルモラーダ山の山頂部氷河がかすかに顔を出す程度だった。晴れるのを待ちバスを一本見送ると次のは13時過ぎなので、こだわらずに降りる。

次にセッラ峠へ向かう。先ほど車窓からサッソルンゴの雄大な姿が見えた。山腹といっても2680メートルの地点に山小屋があり、そこまで「走って乗る」ロープウェイで行ける。二つの峰に挟まれたぎりぎりの鞍部に小屋を作っているので、大きなロープウェイの駅は作れないのである。

このロープウェイの乗り降りが怖い。やや加速して飛び乗ると係員が後ろから押してくれるのだが、自分はバランスを崩して乗り物が大きく傾いた。車内に鉄棒や吊り革など掴まるところが何もない。降りるときもまた大迫力。外から扉が開くと、屈強のおにいさんが腕を引いてくれる。体重を完全に預けるので、ウフン❤という感じ。加速度がついているので、支えてもらわないと後ろに卒倒してしまうのだ。

山小屋からの展望は視界が限られる。二つの峰に挟まれていて岩壁が左右から迫っているからだ。さすがにマルモラーダ山はよく見える。たまたまマラソン大会のようなのをやっていて、麓から選手が次々に駆け上がってきた。

今日はもともと、Gardena Cardの元を取るため、ハイキングはせずあちこちリフトで登って降りてこようと思ったのだが、この恐怖のリフトにもう一度乗る気が起らなかった。麓でも見たが、サッソルンゴを一回りするハイキング・コースがあり、3時間半程度で行けるようだ。老夫婦や家族連れがどんどん出発していくので、衝動的に今日はこれ、と決めて歩き出した。
まず最初の急な下り40分で中腹の小屋に着く。それから水平道を2時間歩き、岩壁の下を一周する。低い尾根の小屋に出てから平らな道を40分で出発点のロープウェイ乗り場に着く。全行程3時間20分~30分とのことだった。

一昨日の経験から、プラス1時間、4時間半でなんとか回れると思ったが、最初の下りで1時間近くを使ってしまった。驚いたことに、急な下りなのに、反対方向からどんどん登ってくる人がいるのである。子供連れも多い。中には、後ろに下の子を背負い、上の子の手を引いて登ってくるお父さん。お母さんには重いものを持たせず、まったく父親の鑑というべきだろう。娘を腰ひもでしばって引っ張る父親もいたが、あれは歩きにくいし、娘がひもに体重を完全に預けたら危険だろう。

中腹の小屋で昼食。あえて重いもの(ビーフシチュー)をいただく。酔わないようにビールは小さいもので我慢した。1時過ぎに再び歩き出す。

ここからは山腹の水平道。眼前にはアルペ・ディ・シウジが広がる。遠方に鋭い断崖の山も見える。

こういう老若男女であふれるコースを歩くと、自分の体力がよくわかる。自分の心肺機能はだいたい65歳前後であろう。まず、子供にはかなわない。どんどん追い抜かれる。ひざを気にして大きな段差ではしゃがみこんで降りているのに、若者はどんどん立ったまま飛び降りていく。自分は足首への衝撃が怖くて、できない。だいたい高齢者といい勝負。一緒に歩いていると、私の方が少し早く、老人も後ろに見た目体力ありそうな男が歩いているのは嫌なのだろう、道を譲ってくれる。ところが上り坂では、私は一気に尾根まで登れず、何度も途中の石に腰かけて息を鎮める。そうすると、さきほど追い抜いた老人が追いついてくるのである。

結局2時間15分ほどで麓の小屋に着く。ここからは40分ほどのはずだったが、やはり50分前後かかってようやく4時20分過ぎに先ほどのロープウェイ乗り場に到着。あこがれのサッソルンゴを一周した充実感は何物にも代え難い。

5時半ごろホテルに着き、シャワーを浴びて夕食へ。大運動のはずだったが、体が火照り、食欲が出ない。注文した値の張る赤ワインも半分しか飲めなかった。デザートまで待たず部屋に戻る。9時半に死んだように眠りにつき、翌朝起きたら7時半だった。睡眠10時間というのは、私には滅多にないことだ。