東電の株主責任

このリバタリアン氏の、東電は私企業なんだから、自らの責任で賠償問題等を解決せよ、という議論はもっともです。

http://news.livedoor.com/article/detail/5524364/

しかしながら、真正リバタリアンならまず、そもそも被害者が賠償されるべきかどうかは裁判で争われるべき、と主張するはずです。また、仮に東電が自力救済するために値上げを選択しても問題はない。というのも、リバタリアンは独占を問題とは考えないからです。

経営に問題がある企業でも、JALなら顧客が逃げてしまうけれど、少なくとも当面、東電から顧客は逃げられない。これは腹の立つ話ではあるけれど、独占それ自体には文句を言わないのがリバタリアンの流儀でしょう。独占が気に食わないから政府が賠償を負担して国債なり増税なり、、、などと言い出すなら「なんちゃってリバタリアン」になってしまいます。

もっと直接的な東電擁護を、懐かしい鈴木淑夫が語っています。

http://www.youtube.com/watch?v=aUOEj3wmudE

この日銀エコノミストは、一時自由党から代議士で出ていました。悲観論の最中に復興需要による景気回復を予言し、電力供給不足は景気回復の妨げになるから停止中の原発を再稼働せよと唱えるあたり、オールド・ケインジアンの面目躍如です。

東電については、りそな形式での公的資金による資本注入を主張している。これは株主責任を問わないから、公的資金注入が成功して業績が回復すると、株主は株価下落による損失をほとんど回復できる。それどころか、危機の最中に株を買って仕込めば、経営回復で大儲けできる。実際、りそなの時には、危機の最中に二束三文で株を購入した投資家は大儲けしました。

これまた腹の立つ話であるから、私は、公的資金を注入するなら一定の減資は行われるべきであると考えています。しかし同時に、電力料金の値上げも行われるべきです。(最悪なのは、政府による補償、すなわち納税者による最終負担です。)

そもそも、地域独占と言ったって、東電はこれまで独占力をフルに行使して高い価格をつけてきたわけではありません。電力会社の利益は規制によって適正水準に抑制されている。実際、東電が値上げによってもっと利益=賠償原資を増やすことができること自体、これまで独占利潤を得ていなかったことを意味します。

東電株を買い漁るハイエナのような投資家について言えば、彼らを一概に批判するのは資本主義の精神に悖ります。危機の時でも株を買ってくれる投資家がいることこそ、資本主義の原動力でしょう。リバタリアンなら、減資は一切認めないはずです。これこそ私有財産の否定にほかならないからです。

同時にリバタリアン公的資金の注入やら国有化やらを一切排します。その代わり、東電の賠償責任が法廷で認定された暁には、電力料金の値上げを許容しなければなりません。

私はリベラルでもリバタリアンでもないので、減資と料金値上げの両方を取り入れた折衷案を支持します。

河野太郎が引用している覆面官僚案は、100%減資を主張しているようですが、私は、これはやりすぎではないか、と思います。

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http://news.livedoor.com/article/detail/5536679/

<東電は、基本的にJALや一般の事業会社と異なり、完全地域独占で顧客が短気で逃げることができず、安定的に料金収入が入るという特徴がある。(電力料金値上げを真顔で語れることがこれを物語っている。つまり、再生の時に強調される事業価値の毀損を防ぐため早期に処理を終わらせなければならないということに強くこだわる必要はない。)

 東電が破綻すると金融不安が生じるとか社債に傷がつくと社債市場が崩壊するという脅かしも使われているが、数兆円規模の不良債権化であれば十分市場で対応できるし、仮に貸し出し余力がなくなるなどという銀行があれば金融安定化スキームを活用してこちらに公的資金を注入すると言えばよい。(銀行は絶対に嫌なので黙るしかなくなるはずである。)

 今の価格で取引に入ってきた株主は、国が支援すればぼろ儲けできるという計算で買っている者も多いはず。市場は既にかなりの破綻の可能性を織り込み始めており、古くからの株主でも多くは損切りしているか破綻覚悟の保有という判断をしていると思われるので将来100%減資としても大きな問題はない。現にJALの時も全く同じ議論があったが、100%減資が実施された。今後も市場は破綻リスクを徐々に織り込んでいくはずである。>