東電・勝俣会長の認識

これは日経新聞4月26日付の記事ですが、コメントを忘れておりました。

例によって文字化けリンクですし、有料でもあるので、全文は、皆さんぞれぞれ「チッソ」で検索してください。

この勝俣会長の言い分は、認識が甘いというか、国民の怒りがわかっていない、とも言えますが、他方、さすがはヴェテランの経営者らしく、経営というものの現実がわかっているという気もします。

つまり、利益をすべて賠償金に充てるとなると、経営者にも従業員にも、経営規律を保つインセンティブがなくなってしまうのですね。

ただし、東電の負担額に上限が設定されていないことは、株主責任を追及しないこととバランスが取れているように思えます。上限を設定してもらいたかったら、東電は減資を受け入れるべきでしょう。

ただ、あまり早く東電が再生してしまうと、原発事故の教訓が風化してしまう恐れがある。この際、負担に上限を付けず、重荷を背負い続けさせることが賢明かもしれません。

もちろん、利益の配分ルールとして、たとえば8割は賠償金、2割は株主といった規則を設け、一定の経営インセンティブを保つことも必要でしょう。

東電の負担を安易に国費に付け替えると、結局、国債発行ということになってしまい、国民が痛みを感じなくなってしまう。東電の負担なら、いずれ電力料金に転嫁され、それが適切な節電インセンティブに反映されるというのがメリットなのですよ。

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<東電の株価が落ち着いてきた。25日の大幅反発に続き、26日は12円安と小幅反落にとどまった。きっかけは日本経済新聞が23日に報道した東電支援に関する最終案で、株式・社債を毀損させないという見通しが出たことだ。ただ同様に法的整理や国有化に至らなかったチッソの事例を見ると、最終案通り上場が維持されても株価の長期低迷が続く可能性がある。東電株の先行きは決して楽観できない。

 「今のスキームでは、(賠償金の支払いで)純利益が残らず、上場企業として意味がない。純利益のなかから一部を賠償金に充てるようなスキームにしてもらいたい」(東電の勝俣恒久会長)。東電は26日、震災後初めてアナリスト向け説明会を開催した。出席したアナリストによると、勝俣会長は東電の先行きについて「賠償スキーム次第」との発言を繰り返したが、「東電の負担に上限が定められていない現在の案では『社債や株式に投資してもらえない』と訴えていた」(アナリスト)という。

 報道された支援最終案は東電と電力業界が賠償金を負担し、東電が支払えぬ異常時に国が資金補助できるというのが骨子だ。支払いの主体はあくまでも東電で、東電の支払額に上限は設定されていない。

 ある外資系証券の電力担当アナリストは「最大の焦点は東電の負担額に上限が設定されるかどうか。最終案では上限が示されておらず、東電株に対するネガティブな見方は変えられない」と話す。>