法科大学院問題

これだって、「自由に参入させて競争させ淘汰されれば最適な結果が得られる」という原理主義的経済学の応用問題でしょ。

要は、これから合格率上位校のみ認めてあとはつぶせば何の問題もなくなる、ということではあります。

しかし、ややこしいのは、「とりあえず参入の機会を与えて競争させる」という経済学的イデオロギーに意味があったかどうかです。

元々、旧司法試験制度で合格率上位校がどこかは広く知られていたのですから、新制度発足時点でこれら上位校にのみ法科大学院開設を認める、という選択肢もあったと思いますよ。しかし、そういうスタートを強制する大義名分が政府になかった。

しかし結果的には、かつての上位校のみ高い合格率ということになっており、新興のロースクールに投入された教員、学生の資源はムダになった、経済学的にも損失が発生した、と言えるわけです。

こういう時、「自由な競争」観念にお墨付きを与えた経済学的イデオロギーに罪はないのか?だって、こうなることは半ば予想されていたわけでしょう?

資源の投入量が少なく投入時間が短いものなら、自由に参入・競争させてよいし、その方が望ましいと思いますよ(例えば科研費申請書の作文とか)。しかし、学校というのは数年にわたり人生を拘束し、時間とカネを使わせるのだから、ムダになったではすみませんよ。

アメリカの(最近は日本でも)大学院では、修士課程1年目の最後にまとめの試験をします(プレリムとか言う)。これで、上の学年への進学適格者を判別します。研究者になれる見込みの低い学生に引導を渡すためです。おそらく法科大学院にもこういう仕組みが必要なんじゃないですか。

元々、法科大学院構想には、何回も受験している万年受験者や中高年受験者を排除する意図があったわけでしょう。これは一種の差別で、あまり大きな声で言えることではないが。

学校という枠をはめたことでこういうタイプの受験者は排除できたが、代わりに、ムダに学費を支払った人が大量に出てきてしまった。

法科大学院の1年目で「あなた無理です」なんて引導を渡したら、それこそ逆恨みされかねませんからね。工学系で、進路指導の不満を根に持って、数年後、大学に忍び込んで教授を殺したやついましたから。

「自由に競争しなさい、結果は知りません」の方が、大学にとっても学生にとっても、恨みっこなしかな。

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http://news.livedoor.com/article/detail/5873696/

<そもそも合格者数でトップの東大(210人)から最下位の姫路獨協大学(ゼロ)、合格率でも一橋大(57.7%)から、当然ながら最下位の姫路獨協大学(ゼロ)まで大差がある。合格率7~8割という当初の理想はどこへ、などと言われるわけですが、正直上位校なら3回目までにその程度の割合は合格するわけです。すると問題は何度受けても受からない受験者しか出せないLSにあるのであってLS全体にあるのではない、と言いたくはなりますわな。

で、ちょっと計算してみました。まず合格率を基準に、平均より5%以上上回っている上位校・±5%以内の中位校・5%以上下回っている下位校に区分してみる。すると、出願者では3割程度の上位校が合格者の6割以上を輩出し、逆に出願者の約半数を占める下位校からは2割程度の合格者しか出ていないことがわかる。もちろんこの区分は今年の結果だけから求めたものなので、たとえば昨年の結果とは多少の違いがある可能性があるが、しかしまあ例年のデータを見てきた印象からはそう大きな変動もあるまいと思われるな。

問題なのは、3つの区分の内実に結構大きな違いがあることで、上位LSが14校・中位LSが11校に対し下位LSは49校もある。つまり、学生定員では半数以上、学校数では大多数を占める下位校の世界を見ているとちっとも学生が合格できなくてえらいこっちゃという印象になるのだが、それは正直上位・中位校とは別の世界の話になってしまっている。結局、まず「上位校に行けるか」というところで一つ何かが決まっているわけで、その点を無視して全体としての数字だけを見て何か言われてもな、という感じがする。

ちなみにこの上位・中位・下位の区分は、例外も結構あるのだがLSの規模にある程度対応している。まあ先ほど下位LS49校(全体の66%)で受験者の5割と書いたところから予想できることではあるのですが、これもやはりグラフにしてみた。規模の切れ目にあまり確たる根拠はないが、まあ旧帝大(名古屋80・それ以外100)・三高商(大阪市立75・それ以外100)あたりを大規模として、それより小さいものをさらに50で分けてみましたという感じ。だが一瞥しただけで中小規模校のヤバさというのがわかると思う(繰り返して言うが、首都大・岡山・千葉などの例外もある)。

要するにLS問題の多くは(すべては、とはもちろん言わない)この大量の小規模LS群にあるのであって、これをどうするかという問題に踏み込まない表面的な数字だけ見ても何もわかったことにならんのではないかという気がするわけです。>