ブードゥー経済学

ネットではTTP反対の議論ばかり有力でちょっとバランスが悪いので、TPP積極推進の学者を探してみました。

例えば伊藤元重。当然TPP参加を呼び掛けていると思ったら、意外なことに、包み隠さずそう主張しているものを見つけるのは難しい。

http://www.nira.or.jp/president/journalism/index.html

これなんか、確かにTPPに言及しているけれど、主眼は農業競争力強化であり、「農家に補助金を与えるのは自由化に備えるためなのだから、補助金はもらうけれど自由化は反対、というのは許されない」というわけ。「いずれ中国に輸出できるようになれるようがんばろう」と言っているけれど、中国はTPPに参加しないのだから、直接関係する話ではない。それに、医療や労働、保険などに関する米国政府の介入の懸念については、そもそも触れていない。

http://www.nira.or.jp/president/journalism/pdf/20101103.pdf

何となく、現時点で旗幟を鮮明にするのを避けている感じ。

というわけで、TPPと関係ない論説に注目。

http://www.nira.or.jp/president/journalism/pdf/shnewsp/20110903.pdf

増税なしで震災復興ができる、社会保障費が捻出できると唱えるのは「ブードゥー経済学」であるという。言い換えれば、コストなしに便益が得られると説くトンデモ経済学の批判です。

日曜日のたかじんの番組で、恒例の政党採点をやっていて、公明党(および電力についてのみ国民新党)以外のどの党もこのブードゥー経済学を唱えたので、唖然とした。もちろん最悪なのは、毛針で国民を釣ろうとするみんなの党

ところが、ルール通り、たかじん委員長の独断で優勝者を決めたところ、みんなの党が優勝してしまった。「増税なしで80兆円捻出できる」という主張がよいというのである。ひどい司会者。

この番組では、田嶋陽子まで「電力自由化」に賛成などと言い出す始末。

しかし、電力自由化が何となく人気あるのは、国民負担なしで、電力料金は下がる、原発事故賠償原資を捻出できる、と宣伝されているからである。事実上、ブードゥーだから人気があるに過ぎない。

そもそも、ひな壇に座っている各党代表はほぼすべて元自民党議員。自分たちが政権にいた頃は、電力自由化なんてそぶりも見せなかったのに、何をいまさら。

ただ一つ、国民新党だけが電力自由化に反対していたのは筋が通っていた。

もちろん、競争政策として電力自由化はしていいですよ。大停電が起きるかもしれないけどさ。

しかし、それで国民負担なしで原発事故賠償ができるとか、化石燃料による発電が増えても電気代を下げられるとか、ウソ八百を垂れ流すのはよせ、ということです。