公的年金の利回り

鈴木亘チームによる世代間格差の計算ですが、ここに詳細が。
 
私が気にしているのは、あくまでも、現在価値に直す時の割引率として何をつかっているか、です。
 
「現在価値」という言葉は、この論文では2回しか出てきません。2回とも、次のように書いてある。
 
<収入推計のためには賃金上昇率、医療費推計のためには物価上昇率と賃金上昇率、
将来および過去データを現在価値に換算するためには年金の運用利回りを用いる。
これらの将来値は、社会保障国民会議(2008)『社会保障国民会議における検討に
資するために行う医療・介護費用のシミュレーション』より採録しているが、これ
は年金モデルの経済前提と同じである。>
 
では、「運用利回り」とは何か。検索すると、今度は、たくさん出てきます。まず、
 
<共通基礎率とは、賃金上昇率、物価上昇率、運用利回りなど、年金財政の計算に必要な
経済変数の総称である。基本シナリオでは、長期の経済前提を物価上昇率1.0%、賃金上昇
率2.5%、運用利回り4.1%としている(表2.2)。>
 
イメージ 1
 
2009年以前については出ていませんけれど、過去の実績値を用いていると推測します。それが妥当なやり方だからです。
 
過去の実績というのはどんな感じかというと、ここに出ています。
 
イメージ 2
けっこう、3、4%ぐらいで回っているのですね。捨てたものではないです。
 
国民年金基金」の運用利回りがここに出ています。こちらは、プラス20とか、マイナス20とか、かなり変動が激しい。国民年金本体よりだいぶ積極的なポートフォリオを組んでいるのでしょう。
 
鈴木が強調するのは、政府の甘目に想定された経済条件の下でも、これだけ世代間格差が発生する、ということでしょう。確かに、「賃金上昇率2.5%、運用利回り4.1%」は高すぎるかもしれません。
 
<実は、はっきり言って、この数字でもまだまだ甘い。この論文では、内閣府という政府機関が公表する推計として、同じ政府である「厚生労働省の2009年財政検証が正しい」という前提を取らざるを得なかったが、もちろん、そこで示されている「100年安心プランは維持されている」というシナリオは、粉飾決算であるとして個人的には批判しているところである。>
 
生涯賃金比で10%前後の負担というのは、確かにちょっと大きすぎる気もします。ただ、厳密に現在価値を計算して給付と負担を比較すれば、制度成熟後の世代でも、運営費と人口減少の分だけ、必ず負担が給付より大きくなるはずです。実際、年金の格差は、2005年生まれ以降の世代については低下に転じている。彼らが成人して年金を負担する頃には、団塊の世代がほぼこの世から消えているからと思われます。
 
一番知りたいのは、人口と制度成熟を考慮してもなお残るマイナスの大きさです。