バブルなくして成長なし

毎度のことだが、この人が言う結論にはそれほどびっくりしないのだけれど、その結論に達する理由がさっぱりわからないんだよね。

日銀の量的緩和FRBのQEの違いの説明はわかりやすい。しかし、今回の日銀の政策はFRBに近いからダメ、というのはどうなの。

私は、資産バブルが起こるから金融政策ダメ、というのは根本的に間違っていると思っています。

TFP推移のグラフを見ればわかるように、日本のここ30年でTFP成長率が高かったのは、バブル期、IT革命期、小泉改革期で、いずれも株価の上昇が起こっている。これらの繁栄エピソードを否定したら日本経済に何も残りませんよ。

http://blogs.yahoo.co.jp/mazepparrigo/37586373.html

CalvoやTornelも「長期的には、バブルと崩壊を繰り返している経済の方が何も起こらない経済より成長している」という論文を書いているし。

http://blogs.yahoo.co.jp/mazepparrigo/28592927.html

しばしば「バブルを起こさないと成長できなくなっている」と言われるが、ならばバブルを起こして成長するべきではないか。

それぞれが自らの能力を自覚してまじめに働けば成長できる、なんてことをやってたら、いつまでもゼロ成長ですよ、多分。

ある程度、山っ気のある人がいて、一攫千金を狙えるような環境でないと、イノベーションなんて起こらないと思いますね。

後半、日本国債に関する議論は、ほぼ正しいと思います。

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130321/245383/?P=2

<日銀が世界で初めて「量的緩和」という政策をひねり出して、2001~06年まで実施した量的緩和はまっとうな政策でした。これは米連邦準備理事会(FRB)が今やっているQE量的緩和)とは似て非なるものです。

まず、日銀が当時やった量的緩和から説明しましょう。当時、既にゼロ金利になっていましたが、銀行が日銀からさらにお金を借りやすくするために、民間の銀行が日銀に置いてある日銀当座預金残高の量を膨大に増やしたのです。本来なら5兆円も積んでおけば十分ですが、それで「ゼロ金利を続けますよ」と言っても「金利をいつ引き上げるかわからない」と不安に思われるかもしれない。そのため、10兆円、20兆円と残高をどんどん増やし、最後は35兆円まで積みました。

 日銀が引き締めに動くときは残高が20兆円から10兆円とかに減るから、借り手側も金融政策の変化を読めるので、突然、資金を引き揚げられる懸念はなくなる。つまり、日銀が言うところの「十分低くなったリスクプレミアムに働きかけて、さらにリスクプレミアムを下げて、リスクテイクを促す」ことで、日銀としては設備投資に対して慎重になっている度合いを少しでも緩めてもらうことにより、実体経済の改善に結びつけよう、という狙いでした。

 これが十分な効果を発揮しなかったことから日銀は批判されてきたわけですが、FRBの現在のQEは同じ量的緩和でも全く違う。

 現在FRBが、QE3という政策の下にやっているのは、金融商品を買っているだけ。毎月、長期国債450億ドルに加えて、住宅ローン担保証券MBS)を400億ドル、計850億ドルもの金融商品を購入しています。

 リーマンショック直後は、金融商品の価格が暴落し大混乱したことから、FRBが買い支えることによって市場の混乱を収めたわけですが、現在は金融商品の価格を維持するために買い支えている。

 証券市場に働きかけて、買い支えることで価格にも影響力を発揮しているわけです。当然、投資家は大喜びです。もちろんFRBベン・バーナンキ議長としてはそうした買い支えを通じて実体経済への波及効果を狙っているわけですが、実態は「資産買い入れによる投資家支援」です。

 これに対し、日銀のこれまでのスタンスは、「中央銀行が証券市場の価格形成に影響を与えてはいけない」という考え方です。もちろんFRB同様、リーマンショックで金融市場がおかしくなり、金融商品にまともな価格がつかないような異常事態が発生した際には、買い支えるということはあります。ただ、それはあくまでも異常事態における正常化プロセスの一環として、例外的措置を取ったという位置づけに過ぎない。

 しかし、日銀が今後、金融緩和策として金融商品の購入をもどんどん拡大するなら、資産バブルの発生を招くことにもなりかねない。企業による設備投資意欲を含め、需要が拡大しない中で、金融緩和を強引に進めれば、その効果は資産市場にしか及ばず、資産バブルを招くことになります。実体経済には何ももたらさない。そしてバブルが崩壊すれば、銀行危機になり、銀行融資が引き上げられ、実体経済はまたも打撃を被ることになる。悪いことばかりです。(中略)

日本国債はいわば爆弾です。つまり、爆弾を放り投げる(=売る)方法と、抱えたまま死ぬという方法がある。日本の国債を膨大に抱えている金融機関は今後、値下がりしていく国債を抱えながら含み損が増えるのを甘受しながら何とかしのいでいくという状況になるのではないでしょうか。

 投げ売りすれば損失を限定することになります。含み損を抱えたままでは、前に進むことは難しいから損を確定し、損切りすることは大切だという指摘はもっともですが、損切りできない機関投資家もいる。国債市場においては損切りをするインセンティブがありません。 損切りをしてもいいことはない。

 リーマンショック以降、国際業務を展開していない金融機関は時価評価をしなくてよくなっています。一方、時価評価を義務づけられている大手の金融機関は徐々に様々な手段を使って国債リスクを減らしています。大手3行は保有する国債の満期(デュレーション)を2年半程度に短期化してきています。つまり、政府が突然破綻しない限り、時価で含み損があっても2年半経てば元本が戻ってくるので、リスクは減っていく。

 もっとも、今、日本国債の利回りはさらに下がって価格は上昇傾向にありますから、金融機関が現在どう動いているかは不明ですが…。

 むしろやはり問題は、地方銀行や信用金庫といった規模の小さな金融機関でしょう。時価評価をしなくていい金融機関には国債保有を増やしているところもある。彼らは国債価格が下がっても投げ売ったりはしない。持ったまま死んでいくことになるでしょう。つまり、救済されるのを待っているということです。

 リーマンショックで変更になった「時価評価をしなくていい」というルールは、国際業務を行うところは解除されましたが、そのほかには残っている。これが延長される可能性はあるわけで、そう考えると、国内の機関投資家国債を投げ売るインセンティブはますますなくなるでしょう。かくして、大暴落は発生しない。僕はそう見ています。>