JR福知山線が衝突したマンションの買い取り価格

古い話ですが、ちょっと興味ありまして。

震災復興でも、行政は再建に必要な額を補助する必要ない、時価で十分、という意見があります。

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http://www.yomiuri.co.jp/features/dassen/200506/da20050606_01.htm

衝突マンション 購入価格で買い取り

「上乗せできない」JR西 補償方針

写真
退席するマンション住民に頭を下げる垣内剛JR西日本社長=中央=(5日午後3時47分)

 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故JR西日本は5日、同市内で、電車が衝突したマンション「エフュージョン尼崎」の住民に対する説明会を初めて開いた。垣内剛社長が謝罪したうえで、「マンション全戸を購入時の価格で買い取りたい」などと、補償交渉に臨む基本的な考えを示した。今後は個別交渉に入るが、住民側には「元の住環境を取り戻すには不十分」と不満が強く、交渉は難航が予想される。

 説明会には全47世帯の住民95人が出席。垣内社長が「幸せな暮らしを壊し、苦しみを与えてしまい、申し訳ございません」と謝罪し、〈1〉購入価格での買い取り〈2〉事故による心身の不調にかかった治療費の負担〈3〉新居に移るまでの仮住まい家賃の負担――などの補償方針を示した。

 これに対し、住民側は「購入価格は比較的安く、同じ条件のマンションは見つけられない」と反発したが、JR側は「上乗せはできない」と応じない考えを示した。垣内社長も終了後「時価が通常だが、(より高い)購入価格としたのは補償の意味合いも含んでいる。かなり踏み込んだ提案と思う」と説明した。

 2002年11月に完成した同マンションは鉄筋コンクリート9階建て、分譲価格2700万~1700万円。近くのマンションに比べ手ごろな価格が人気を呼んだ。事故後の国土交通省の調査では、マンションを支える柱に大きなひびなどはなく、構造上、建て替えの必要はないと判断された。

 住民でつくる事故対策本部の畠利明代表は「元の暮らしに戻りたいだけ。子供たちも苦しんでいるのに心の問題にも触れず、誠意が感じられない」と主張し、心の傷に対する慰謝料などを求める要望書を、垣内社長に手渡した。

 事故を巡っては、「多くの方が犠牲になった場所にはつらくて住めない」と転居を希望していた45世帯が、賃貸住宅で仮住まいを続けている。残る2世帯も、補償交渉にめどが立てば同様に転居する考えという。

住み続けたかった/不安ばかり大きく 住民

 会場となった尼崎市総合文化センターの会議室で、JR幹部と住民95人が向き合った。補償に関する垣内剛社長の説明が終わると、住民から矢継ぎ早に質問が飛んだ。「私たちはこのまま住み続けたかったのに、たった3年で出ないといけないんです」。涙声で訴える女性もいた。

 80歳を超える両親の代理で出席した女性(52)は顔を曇らせた。「謝罪の気持ちはわかったが、補償内容に大企業の冷たさを感じた。年老いた両親と、私たちとでは1日の重みが違う。早く安心して暮らせるようにしてあげたいのに、これでは次のステップを踏み出せない」

 事故当時、怖くて救助活動ができなかったという30歳代の女性は、今も自分を責め続けている。しかし、こうした心の傷への補償については一切、触れられなかった。女性の夫は「事故前の生活、心を取り戻したいだけなのに……。JRは何もわかっていない」。

 4階の主婦(46)も「事故以来、夫は仕事のやる気が起こらないといい、たばこと酒の量が増えた。ちょっとしたことで夫婦げんかになってしまう」とつらそうに語った。

 同マンションの近くで仮住まいをしている主婦、平田麻美さん(31)は4人家族。小学校に通う長男が転校をいやがっているという。「この内容では、同じ校区内に新しい物件を探すのは難しい。少しでも先が見えて気持ちが軽くなればと思って来たが、不安ばかりが大きくなった」と、肩を落として会場を後にした。

(2005年6月6日 読売新聞)