絶景もオペラも

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ユングフラウヨッホから望むメンヒ)

9月10日(金):グリンデルバルドからルツェルン

今日はたいへんな一日である。

まず始発(7:17)の登山鉄道に乗って8:52にユングフラウ・ヨッホに着く。これは午前中の下山を前提したお得チケットで、通常160フランのところ130フランとなる。それでも高い。

モちろん、それでも始発の電車は大混雑。もっとも混雑の大半は現地の高校生(?)団体によるものだった。展望台にそれほどの人は殺到せず、ゆっくり絶景を堪能できた。

いったん下に降り、氷河に出ようと思ったが立入禁止だった。そこで暇つぶしとして売店でサンドイッチとコーヒーを買った。もちろん、高くてまずい。「氷の宮殿」というものに行ってみたがつまらなかった。氷河をくり抜いて、いろいろ彫刻がしてあったが、こういうものはアニメの主役とかが多いわけで、現地の人、それも子供以外はおもしろくなかろう。だんだん人が増えてきて、氷宮殿では韓国人一行といっしょに大行列。

やはり一番素晴らしいのは展望台と思い、もう一度上った。メンヒの雄姿。アレッチ氷河の輝き。こういったものは日本では絶対に見られない。最初10時の電車で帰ろうと思っていたが、いつの間にか過ぎてしまった。

そろそろと思い降りて行ったら、さきほど立入禁止だった氷河への出口が開いていた。すでに10時10分だったが、ダッシュして外に出てみる。意外と普通の雪景色だった。しかし光の反射で目が痛いほど。ほどほどで切利上げて、プラットフォームへ。

乗れるはずのホームが団体専用となっていたので、もう一つのホームに行ったら、駅員に戻れと言われた。次の発車は3番線というのだが、すでに電車は入線しており、乗車扉には「貸切」と掲示してあった。突然、大量の東洋人の集団が押しかけてきた。

この10時30分発に乗れないと、17時開始のオペラに間に合わない。知らんぷりをして満員電車に乗り込んだ。運悪く、団体のガイドの近くに座ってしまったので、できるだけ視線を合わさないようにした。

しかし、こういうことはあらかじめ知らせてほしいというものだ。10時半の電車が団体貸切としても、少しは一般客の席を残しておくのが電鉄会社の義務であろう。会社は、10時の次は10時半と、何の留保もつけず時刻表を掲載していた。実際、この電車にも一般席はあったのかもしれないが、そんなものをいちいち探していては乗り遅れてしまう。

なんとか乗り込んだ電車は、11時半近くにKleine Scheideggに着いた。行きには雲がかかっていてわからなかったが、ここはこの地で最高の絶景ポイントだ。眼前にユングフラウ、メンヒ、アイガー三峰が巨大な迫力で迫ってくる。次来る時はここに泊まろう。

登山電車は12時12分にGrindelwaldに到着。駅舎にあずけておいた荷物をチェックアウトして、すぐ19分発のInterlaken Ost行きに乗る。運良く、予定通り13時04分発のLuzern行きに乗り換えた。

この電車、途中までブリエンツ湖畔を快走したが、とある引き込み駅で長時間停車した後、再び動いたあとはまるで登山鉄道だった。単線の軌道をギリギリ言わせながら登っていく。なるほど、ここは難所なのだ。

Interlaken-Luzern間は地図で見ると大した距離ではないが、2時間かかった。15時05分にLuzern着。さっそくホテルにチェックインし、シャワーを浴び、17時の開演になんとか間に合わせた。

サロネンがフィルハーモニアを振って「トリスタンとイゾルデ」の演奏会形式上演。とはいえ、これはパリ・オペラ座が日本に持ってきた、Peter Sellars演出の舞台と同じもの。演劇的効果の重点は映画によって伝えられる。あまり説得的なものとは思えなかった。歌手・演奏は良かった。

ワーグナーの大曲は、ヨーロッパ・アルプスの名峰のような充実感がある。

いずれにしても、一日でユングフラウの絶景と、ルツェルン音楽祭の力演を同時に体験できたのだから、こんなに収穫の高い日は、人生にもそう何度とはなかろう。