年金超過債務の切り離しについて

不足分の年金会計からの切り離し、というのは賛成ですが、形式的にそういうやり方をしなければならないというわけではないと思いますよ。

政府が今何を考えているかというと、仮に積立金が枯渇したら、「不足分が必要」という大義名分で消費税を引き上げるつもりだと思いますよ。

鈴木の言い方でも、裁定済みの年金をカットしたり、現在、国民に公表している代替率50%を切り下げたりすることを考えているわけではないようなので、仮に超過債務を切り離して世代ごとの積立勘定を守ったとしても、必要な増税額が減るわけではないでしょう。

要するに、今はまだ明日年金が支払えなくなる、という状態ではないので、国民はまだ状況を分かっておらず、「ムダ撲滅で年金が払える」などという妄言がのさばっているわけです。むしろ積立金を枯渇させてしまった方が、政治的に増税がやりやすくなる。何かというと、「増税分を何に使うんだ?」と街角の有権者は聞くじゃないですか。

先に見たように、今のプランでは、制度成熟後の世代ではほぼアクチュアリー・フェアとなっており、これ以上どうしようもない。ただ、今の若年世代がもらう年までに制度が破綻してしまうかもしれないから何とかしよう、ということでしょう。

その時、世代ごとに勘定を分けて、それぞれの世代で積立金による給付という形式を守ろう、というのが鈴木の考え方でしょう、確かに、けっこうなお考えです。反対はしません。

しかし、それで増税が不要になるわけではなく、実質的な違いがないなら、テレビであまりエラそうに解説するのは、いかがなものか。

責任追及というのは、マスコミは大好きでしょうが、そういうこと言うから、役人も問題を先送りするんですよ。

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http://www.the-journal.jp/contents/jimbo/2012/03/post_144.html

<鈴木氏は過去の大盤振る舞いのために消えてしまった総額800兆円からの年金積立金の欠損、つまり債務を埋めるためには、債務を年金会計から分離し、100年単位の時間をかけて税金によって補填していく方法しかないだろうと言う。

 しかし、はたして今の政治に800兆の債務を解消して、一旦不作為によって賦課方式に陥ってしまった現在の年金制度を、再度、積み立て方式に戻すなどという大技が期待できるだろうか。800兆の債務を分離し、ぞれを税で返済するという話になれば、当然その大穴を作った厚労省の責任問題も浮上する。また、税方式に移行することになれば、年金の管理が厚労省から財務省に移ってしまうため、厚労省は何が何でもこれに抵抗してくるはずだ。

 ということは、このような提案は、年金を管轄している厚労省からは、何があっても出てくるはずがない。経済財政諮問会議のような形で、厚労省外部からこのような年金改革案があがってくる枠組みを作り、さらに厚労省の徹底抗戦に遭いながらそれを断行するためには、想像を絶するほどの政治力が必要になるだろう。しかし、それができなければ800兆の債務はさらに大きく膨らみ続け、積立金が枯渇した段階で年金が払えないという事態を迎えることになる。>