残念すぎる修復画“作者”「取り分よこせ」観光客殺到で訴訟騒ぎ

これは笑っちゃうけれど、芸術とは何か、考えさせるところもある。

元の絵は、プロの絵ではあるけれど、ありふれたものである。では婆さんの絵はどうかというと、これまた単なる下手くその絵ではある。しかし、何となく味があるように見えなくもない。実際、今は教会も婆さんの絵にガラスでカバーして保護しているのである。また、地元のワインの瓶のラベル(エチケット)には、この絵に似た痴呆のような僧の絵が描かれて売られているそうだ。

しかし、おそらくこれも一時的な現象であり、ニュースとして新しさがなくなると、婆さんの絵も忘れられるだろう。

ピカソの「キュービスム」の絵って、誰もが芸術としてありがたく鑑賞しているのですが、単なる下手くそな絵と本質的に何が違うのか、という素朴な疑問に、説得力ある答えを用意できる美術専門家というのはいないような気がします。

昔の中学の美術教師あたりがよくしていた説明というのは、「ピカソは上手に描くこともできたんだ。にもかかわらず、修行の結果、歪んだ絵に到達したから芸術なのだ」などいうものです。でも、こんなの全然説得力ないよね。

下手くそな絵はあくまでも下手くそな絵で、本当は上手に描けることが芸術という付加価値を生んでいるわけではないですよね。

**************************************************************

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20120923-OHT1T00046.htm

<スペイン北東部のボルハで、教会にあるキリストのフレスコ画10+ 件が、高齢の素人女性に“修復”され、元絵と似ても似つかない姿となった騒動で、女性が修復画の「著作権」を主張し、訴訟を起こす準備をしていることが22日までに明らかになった。修復画の“微妙さ”が逆にウケて、教会には連日、多数の観光客が訪れるほど大人気に。入場料を徴収し始めた教会と、「取り分」を要求する女性側が対立している。

 先月、スペインで巻き起こった“残念すぎる”修復画の騒動が、生臭い法廷闘争に発展しそうな流れになってきた。地元メディアなどが、修復を担当した女性の訴訟準備について報じた。

 元の絵は画家エリアス・ガルシア・マルチネスによる20世紀初頭の作品で、キリストの肖像画。老朽化したため、地元の素人画家セシリア・ヒメネスさん(80)=81歳との一部報道もある=が名乗り出て“修復”。その結果、キリストの頭のイバラ冠が頭髪と一体化し、妙な流し目、ぼんやりした口元と、元絵の面影がない無残な状態となってしまった。

 ところが、この修復画の“微妙な”タッチが逆に盛り上がり、話題となった。教会には、実物を見ようと、連日、数百人の観光客が押し寄せた。地元の格安航空会社が、ボルハの最寄り空港までの新路線を設定したほどの人気となった。

 それまでは無料だったが教会はついに、9月15日から入場料金を設定。1人当たり1~4ユーロ(約102~406円)の金を徴収し始めた。入場料金設定後、最初の4日間で2000ユーロ(約20万円)が金庫に入ったという。

 これを聞いたヒメネスさん側は、何と修復画の「著作権」を主張。入場料の一部を渡すよう、教会に求めた。報道によると、教会側は徹底抗戦の構えだという。ヒメネスさん側は弁護士を雇い、訴訟の準備を進めている。元絵は歴史的な名画ではないため、修復がなければ有名にならなかったというのが、ヒメネスさん側の言い分だ。

 ヒメネスさんは、著作権収入を、自身の息子も患う難病の治療基金に渡すとして、慈善目的を強調している。ネット上では、元絵に戻さず、修復画を残すよう求める署名が2万人以上集まるなど擁護論が高まっているが、今回の「分け前要求」で、バッシングに変わる可能性すらある。

 そもそも“修復画”に著作権があるのかという問題も浮上。既に修復画をデザインしたグッズなどがスペインで売られているが、著作権が認められれば、使用料金が発生することもあり得る。ヒメネスさんの“善意”から生まれた修復画騒動は、キリストも、元絵の作者も思いも寄らなかったはずの方向に転がり始めた。>