リニアコライダー:夢と現実

カネはかかるがカネにならない研究、なんでしょうね。

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http://sankei.jp.msn.com/science/news/130505/scn13050512550000-n4.htm

<欧州各国が及び腰になった理由はまだある。ILCによる研究成果が産業の育成・発展に結び付く「うま味」が想像しにくいことが大きいようだ。

 国際協力による実験施設の前例としては、2011年7月に完成した国際宇宙ステーション(ISS)がある。1980年代に計画がスタートすると先進各国がこぞって事業に参入し、現在は日米欧15カ国が計8兆円を出資した。日本もこれまで7千億円以上を支出している。

 これほど各国が計画を熱心に後押ししたのは、ISSでの研究が、情報通信や気象観測などの産業分野に直結するだけでなく軍事転用も十分可能だと踏んだからだ。米国が巨大加速器SSC計画を中止したのも同時進行していたISS計画を優先したからに他ならない。

 そのISSでさえ、米を含む参加国から「費用対効果が小さい」と不満が噴出し、2020年までの運用期間延長の見通しが立たない状況に陥ってる。

 ILCでの研究はISS以上に商業転用は難しい。先例となるLHCは立地国に恩恵が集中するのを防ぐため「基礎研究への専念」を掲げ、研究成果の産業化を条約で制限している。

 ILCにそんな制限はないが、たとえ暗黒物質ダークマター)の正体が分かったとしても商業転用は難しい。ましてや研究成果を元に「ダークマター爆弾」や「ビッグバン砲」が開発される可能性はほぼない。米国政府が関心を失った理由もそこにあるとみられる。

この現状を見る限り、日本が受け入れを表明すれば、半額負担では済まなくなる。そもそも半額負担の話は研究者グループが言っているだけで各国が合意したわけではない。落ちぶれたとはいえ、なお金持ち国である日本が手を挙げれば、欧米各国は一斉に出資を渋る公算が大きい。

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 それでも、故湯川秀樹京都大名誉教授をはじめ7人のノーベル物理学賞受賞者を生んできた日本の物理学会にとっては2度と巡ってこないチャンスであるのは確か。ある素粒子物理学界関係者はこう打ち明けた。

 「ここから先は費用負担を巡る条件闘争になるだろう。日本が積極的に手を挙げたら負担を一気に押しつけられる。『各国から負担の約束を取り付けることができるならば』と粘りに粘って交渉を続けていけば…」

 つまり「待てば海路の日和あり」ということか。

 研究者グループ「ILC立地評価会議」は7月までに国内2候補地の適地評価書をまとめ、政府に提出する予定。政府はこれを基に、受け入れの是非を判断することになるが、夢とロマンと名声の為に大枚をはたくかべきか。首相は厳しい決断を迫られる。>